ライブ配信サービスTwitCastingの怪談語りチャンネル「禍話」。2016年から始まったこのチャンネルでは、これまでに2000話を超える怪談が紹介されており、多くのホラーファンを惹きつけている。
同チャンネルでホストを務めるのは、北九州に住む書店員のかぁなっき氏と、映画ライターの加藤よしき氏だ。
今回はかぁなっき氏が知人のSさんから聞いたという友人3人の体験談、「招きプレハブ」を紹介する。山奥に出現した謎のプレハブ群で若者たちが見た、“ありえない存在”とは一体――。(全2回の1回目/#2を読む)
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この話は、かぁなっき氏が知人Sさんに怖い話がないかと尋ねた際に、「よくわかんない話でよければ……」と遠慮気味に教えてくれたというエピソードだ。この話を実際に体験した人物はSさんではなく、Sさんが20代の頃によく遊んでいた友人たちだという。
「本当に意味がわからない出来事っていうか……。こういう怖い系の話って、だいたい『次はお前だー!』みたいにドキッとするオチがついているもんじゃないですか。でも、なんというか、これは本当によくわかんなくて、だからこれが怖い話って呼べるのかもわかんないんですよね。でも、思い出すたびに、なんか気持ち悪くなるんですよ」
Sさんはそう前置きしたうえで語り始めた。
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夏の心霊特番の予告が流れた
関東地方北部に住むSさんは、今でこそ社会人として働いているが、若い頃は少々やんちゃもしていた人物。当時は仲間内にも似たようなタイプの人が多く、夜は遠方まで足をのばして遊びまわっていたそうだ。
本格的な夏はまだ先だったがジメジメとした梅雨入りをする季節に、Sさんの友人だったAさん、Bさん、Cさんは、いつものようにAさんの自宅へ集まって時間をつぶしていた。
ザッ、ザッ、ザザッ。
午後11時頃、Aさんが気怠そうにテレビのチャンネルをザッピングしていると、画面には、夏の心霊特番の予告が流れ、女性タレントが真っ暗な山の中で怯えている映像が映し出されている。スマホをいじりながら、Cさんがぽつりとこう話した。
「そういや、1カ月くらい前に俺、彼女と心霊スポットが原因で喧嘩したことあるわ」
「え、どういうこと?」
「くだらない理由で喧嘩しすぎだろ」
笑いながらCさんにツッコミを入れるAさんとBさん。しかしCさんの様子は、微妙にいつもと違っていた。
「まあ、お前らには笑えるかもしれねえんだけど……」