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ゾッとするほどの静けさ

 周囲から街の明かりは消え、車窓から見えるのは真っ暗な山道に変わっていく。

 ジャリジャリジャリ。

 砂を踏みしめるタイヤの音。

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©iStock.com

「ちょっとここからは歩くしかねーな」

 カチャ。

 エンジンを切った途端、彼らはゾッとするほどの静けさに包まれていることに気がついた。車から出ると、そんな静けさとともに、蒸し暑い夜の空気と湿気が肌にまとわりつく。

「暗っ……結構こえーな、おい」

 音と明かりのほぼない空間に、さすがの彼らも恐怖を感じ始める。

「歩きって、まじかよ」

「でも、この先すぐらしいって彼女言ってたんだろ? 大丈夫だろ」

「見つかるかわかんないからな。俺行ったことないんだし」

「まあ、見つかんなかったら適当に帰ればいいよ」

無数のプレハブが乱立した空間が

 だが、山中は過酷だった。左右が草でみっしり覆われた獣道。歩くたびに葉先や枝が腕や足に擦れていく。すぐに着くはずが、歩けど歩けどプレハブ群は見つからない。

「痛っ! また刺さった……」 

「わりとこれキツいな」

「帰る……?」 

「いや、帰るってここまできて帰るのダサすぎだろ」

「おい」

「うお! 虫か……ビビった」

「おい!」

「なに?」

「あれ……」

 Aさんが、照らしたスマホのライトの先。

 ぼんやりと開けた空間に、無数のプレハブ小屋があった。

後編に続く/文=TND幽介〈A4studio〉)