ゾッとするほどの静けさ
周囲から街の明かりは消え、車窓から見えるのは真っ暗な山道に変わっていく。
ジャリジャリジャリ。
砂を踏みしめるタイヤの音。
「ちょっとここからは歩くしかねーな」
カチャ。
エンジンを切った途端、彼らはゾッとするほどの静けさに包まれていることに気がついた。車から出ると、そんな静けさとともに、蒸し暑い夜の空気と湿気が肌にまとわりつく。
「暗っ……結構こえーな、おい」
音と明かりのほぼない空間に、さすがの彼らも恐怖を感じ始める。
「歩きって、まじかよ」
「でも、この先すぐらしいって彼女言ってたんだろ? 大丈夫だろ」
「見つかるかわかんないからな。俺行ったことないんだし」
「まあ、見つかんなかったら適当に帰ればいいよ」
無数のプレハブが乱立した空間が
だが、山中は過酷だった。左右が草でみっしり覆われた獣道。歩くたびに葉先や枝が腕や足に擦れていく。すぐに着くはずが、歩けど歩けどプレハブ群は見つからない。
「痛っ! また刺さった……」
「わりとこれキツいな」
「帰る……?」
「いや、帰るってここまできて帰るのダサすぎだろ」
「おい」
「うお! 虫か……ビビった」
「おい!」
「なに?」
「あれ……」
Aさんが、照らしたスマホのライトの先。
ぼんやりと開けた空間に、無数のプレハブ小屋があった。
(後編に続く/文=TND幽介〈A4studio〉)