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恋人が懐かしんだ“心霊スポット”

 Cさんいわく、恋人のDさんとドライブしている最中、Aさんの自宅からそう遠くない山の一角に差しかかると、急にDさんが過去を懐かしむように、元彼との馴れ初めを語り始めたのだそうだ。Dさんによれば、同じエリアには不気味な心霊スポットがあると聞いて友人数人と一緒に出かけたことがあり、そこで元彼と出会った……という話だった。Cさんはデリカシーのなさに苛立ち、車中で喧嘩になってしまったのだという。

「で、結局どんな心霊スポットだったの?」

「そこ気にする?」

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「いや、お前の喧嘩よりそっちが気になっちゃって……」

「なんだっけなあ、なんかプレハブ? がたくさん建ってた、とか言ってたわ」

「それだけ? 幽霊が出るとか、そういう話じゃないの?」

「俺も気になってネットで調べたんだけど、ホームレスが死んでたとか、ババアに追いかけられたとかウソっぽい話しか載ってなかった」

「ふーん……行くか、これから?」

「いいね!」

「思い出の地巡りしようぜ」

「ふざけんなよ。お前ら」

着の身着のままで車に乗り込んだ

 嫌がるCさんをよそに、深夜ノリが高じて車で現地へ向かうことに。夜の山道へ軽率に足を踏み込むのは危険だが、一行は着の身着のままで車に乗り込んだ。

 Cさんの運転で、夜の道をひた走る。Cさんはそのプレハブがある場所に行ったことはないそうだが、道中、Dさんから聞いた話をゆっくりと話した。

 その山を少しだけ分け入った場所。

 木がところどころ切り倒されてできた、奇妙に開けた空間。

 そこに、プレハブが建っている。

 1畳から2畳くらいの小さなプレハブが、1棟ではなくボコボコと数十棟も。

「でもさ、プレハブって何棟も建てるもんなの?」

「それ俺も気になってた。普通物置とか休憩所とかでしょ」

「俺に聞かれてもわかんねえよ。でも、誰も住んでる感じはしなかったって言ってたな」