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それでも大橋貴洸は“タイトル”を目標に掲げる「意識することが自分自身のモチベーションに」

それでも大橋貴洸は“タイトル”を目標に掲げる「意識することが自分自身のモチベーションに」

大橋貴洸六段インタビュー #2

2022/09/07
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――対局室に入られたのは定刻間際でした。

「開始時刻が早かったこともあって、普段の対局とは朝の時間の過ごし方が違ったものになったのかと」

――長考のときは選択を悩まれていた?

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「いくつかの選択肢をどれがいいのか読んでいました」

――形勢はどう見ていましたか?

「そうですね……、一番長考したときですかね。思わしい手がないという、ちょっと苦しい時間ではありました」

――終局が近づいたときには、気持ちを割り切ったようにも感じました

「最後の方ははっきりと負けの局面になっていましたので、一局の流れを振り返りつつという部分も多少あったかもしれません」

 

トップ棋士との勝負は、普段見る将棋とは違うものがある

――タイトルを目指すと公言するのは勇気がいることですが、あえて口にされたのは?

「やっぱり四段昇段したときにタイトルを目標にやってきている部分があって、それを意識することで自分自身のモチベーションにも繋がるのかなと思います」

――今期の成績にもその影響は出ていますか?

「わからないですけど、タイトル戦やトップ棋士と戦うには常に勝っていかないとならないので、普段から一局一局しっかり指すだけなのかなと思っています」

――豊島九段と長い持ち時間で指した印象は?

「そうですね、久々の対局というのと、前回は早指しだったので、ほぼ初対局みたいな感じがしました。やっぱりトップ棋士との勝負を体験することで、普段見る将棋とは違うものがあると感じます」

――新たな課題は見えましたか?

「今終わったばかりですのであれですけど……、得られるものはあったなと」

――気持ちをどう切り替えて次に臨みますか?

「いつも普段通りやるだけです。棋士として続けていく限り、そうありたいと思っています」

 質問を終えると、彼はそれまでよりはっきりとした声で、「遅くまで取材していただき、すみません」と言った。タクシーで帰るのかと聞くと、「まだ電車があるので」と答えた。

 福島駅は高架下の改装工事が行われており、そこに軒を連ねていた飲食店は全て立ち退いた。人混みの中へゆっくりと消えていく大橋の背中を見送る。街の明かりが、ピンクのスラックスに刻まれた皺を浮かび上がらせた。

写真=野澤亘伸

◆ ◆ ◆

 大橋貴洸六段ら藤井聡太竜王と同世代の棋士たちの姿を描いた群像ルポ「藤井時代か、藤井世代か」は、好評発売中の文春将棋ムック「読む将棋2022」に掲載されています。どうぞあわせてお読みください。

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