「午前11時30分57秒頃、山上容疑者は北西方向に歩みを…」
午前11時28分42秒頃、演説を終えた候補者と「いわゆるグータッチを交わした」安倍氏が演台に登壇。この時の聴衆の数は「約300名」で、安倍氏の演説が始まってまもなく山上容疑者が動き出す。
午前11時29分51秒頃、「歩道角」で「周囲を見渡していた」山上容疑者は同11時30分0秒頃から、「バス・タクシーロータリー沿いの歩道を、徒歩でゆっくりと南進し始めた」。しかし、往来の激しい現場の状況に気を取られ、現場の「警護員」らがその動きに気づくことはなかった。
山上容疑者は午前11時30分56秒頃までに、バス・タクシーロータリー内に「進入」。「そのバス停車枠を通って北西方向」に歩みを進めて安倍氏との距離を縮めていく。
そして午前11時30分57秒頃、「バス停車枠の北西部分において、歩きながら、ショルダーバッグの中を見ながら右手を入れ、同バック内の中身を確認」し、さらに北西方向に歩を進めた。
銃撃の瞬間「すさまじい轟音が記録されている」
午前11時31分0秒頃、「ショルダーバッグから視線を上げ」た山上容疑者の視線の先には安倍氏がいた。
バス・タクシーロータリーを出た山上容疑者は、「遊説場所南側」つまり安倍氏の後方の「県道の横断歩道でない部分」を横断。同3秒頃、県道上で「歩きながら、右手でショルダーバッグ」から自作の改造銃を取り出し、同5秒頃、県道の中央付近まで到達した山上容疑者は両手で銃を「把持し、銃口を演台上」の安倍氏に向けた。
驚くべきは、この時、安倍氏周辺の警戒に当たっていた奈良県警と警視庁の警護要員5人全てが、山上容疑者が銃口を安倍氏に向けたことに気づいていなかったことだ。
山上容疑者が安倍氏に照準を合わせ、銃弾を放つまでの数秒間の出来事も報告書は秒単位で詳述している。
午前11時31分6秒頃、1発目の銃弾が発砲された。この時、山上容疑者と安倍氏との距離は「約7.0メートル」。現場の映像にも、その際のすさまじい轟音が記録されている。
「ドゴーン」
耳をつんざくその音に警護要員の警察官らが一斉に反応したが、そのほとんどが、「発砲音を銃器によるものと認識しなかった」という。それでも、異常を察知した2人が安倍氏を守るために背後から安倍氏を狙った山上容疑者の間に割って入ろうとし、2人が山上容疑者を「確保」するために動き出した。山上容疑者は、1発目の発砲からわずか1秒後には「再度、両手で」銃を構えながら安倍氏との距離を詰め、再び標的に狙いを定めた。