スマホで原稿を書くけれど、本当はスマホは…
イメージとしては、捨て場のない紙芝居みたいなもの。一つツイートが良ければ、次も読んでくれる。最初に読んだ人が最後に何%残って読んでくれてるかとか、そこらへんをすごく意識して書いてます。だからTwitter小説には現代のいいところも悪いところも詰まってるなって思います。発信側だけでなく、読む側のコンテンツに対する接し方も、すごく現代的」
スマホで表現活動をしつつ、日常では意識的にスマホと距離を置くようにもしているそうだ。「スマホ触っちゃうと頭がスマホに乗っ取られるんです。活字が欲しくなっちゃうんですよ、スマホ持ってると。本読むか、ウィキペディア見てるか、インターネットなんかで意味のないことをずっと調べてるか。
今日はオクラが何語か調べてましたね。だからスマホは家に置いて、散歩に出ます。考えながらテクテクお散歩して、趣味の美味しいご飯に行く時も基本的にスマホは開かない。けどスマホありきの暮らしです(笑)」
気をつけろ、港区には麻布競馬場が歩いている
アザケイは、こんな論議を呼ぶ本を出版したことを実家の両親に言えるのか?「言えないですね(笑)」。だが今後の活躍が進めば、身バレのリスクも高まるだろう。いつかはカミングアウトして、専業作家になることも視野に入っているのだろうか。
「そうですね……。でもたぶんサラリーマン辞めちゃったら、ほんとにただの文章うまいおじさんになっちゃうなという気がしてて。今も仕事で色んなとこ行ったり、色んな人と会って、それは楽しいんです。あとやっぱりサラリーマンってすごいですよ、毎年本が10万部売れるぐらいのお金が入ってくるので。
僕、あんまりお金に興味もなくて。お金使って楽しくお遊びするみたいな方が好きなので、専業にはならずに細々としょうもないことをしていきたい。周りに言うつもりもないですね。友達をネタにしたいなと思った時にやりづらくなる(笑)。匿名だからやりやすいし、みんなも色々想像してくれるしということで、いますごく楽な立場です」
たっぷりと印税が入ったら、港区にある人気寿司屋に連日出没して、さらに嫌な奴になって欲しい。彼は実に巧妙に街に潜んでいる。
いや彼としては潜むまでもなく、ごく普通に自然に、スニーカー姿でただ飄々と散歩し、気の向くままうまい酒とご飯に舌鼓を打ちつつ、人々の会話に耳をそば立てて楽しく過ごしているだけなのだが。彼がどこの店に出没しても、きっと我々はそれがまさかあの麻布競馬場だとは気づかない。