麻布競馬場がTwitter小説を書き始めた理由
東京に暮らしながら、ひたすら他人を観察する日々だった。「独身で男の30代が行き着く場所はここなんですよ。20代で一番遊んでた3人の友達がいたんですけど、みんないなくなったんです、周りから。1人は激務で体壊して地元帰っちゃって。1人は奧さんの要望で地元で子育てしたいって地方に行っちゃって。あと1人は海外転勤。だからもう遊んでくれる人がいなかったんですよね。そうするとお金の使い道がご飯とお酒しかなくなってくるんです。お金使うのって才能なんですよ。僕欲しいものがなくて、全然。服も全身ユニクロのこれを6着買って着回してるんですけど、興味がなくて」
「それで、ひとりでぶらぶら出歩いたり、ちょっといいお店で食事する時間が増えてしまって。コロナが決定的でした。それでTwitterを見ていたら、窓際三等兵さんというアカウントが、ああいうツリー形式の小説をちょうど去年の夏ぐらいからやり始めてて、ああ面白いな、乗っかろうと思ったんです。だから、最初に書いてから今でちょうど1周年くらい」
なんということだろう、アザケイはTwitter小説を書き始めてから1年で本を出してしまったのだ。「そんな、本にまとめて名を上げようみたいな気持ちは全くなくて。文芸とか文学なんて発想じゃなく、バズるコピペを作ってみたいな、ぐらいの気持ちだったんですよね。じゃあバズるものってなんだろうと考えると、みんながちょっとムカついてる、私立文系の偉そうなやつとか、年収600万か700万くらいで芝浦のボロいマンションに住んでるくせに港区名乗ってるやつとか、そういう人を書いてみようと」
なぜTwitter小説を次から次へと量産できるのだろうか
「それは自分の属性にもすごく近いから書きやすかったし、これまで見てきた人たちからサンプリングしたデータがいっぱいあったから、機械的にバーっと構成して。それで書いていったら、案の定いい意味でも悪い意味でもインターネットのおもちゃになって、流山おおたかの森をイジった『30まで独身だったら結婚しよ』が一番最初にバズりました」