川崎市臨海部の工場地帯といえば、日本有数の「工場夜景スポット」として知られている。工場夜景は東扇島東公園や川崎マリエンから見ることができるが、船に乗って運河から眺める川崎工場夜景クルーズやバスツアーも人気になっている。

 しかし、その一方、川崎工場地帯の「昼間の姿」は意外と知られていない。住宅や商業施設はいっさいなく、周囲には海と運河しかない埋立地なので、工場で働く従業員や工場マニアでもなければ、昼間にここを訪れることはまずないからだ。

 川崎工場地帯の昼間の姿とはどのようなものなのか。工場が稼働していない日曜日に、浮島町、千鳥町など巨大な工場が立ち並ぶ一帯を探索してきた。(取材・文=押尾ダン/清談社)

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ジブリアニメに出てくるような巨大工場

 最初に訪れたのは浮島町の工場地帯だ。

 浮島町とは、多摩川、大師運河、東京湾に囲まれた面積4.84平方キロメートルの埋立地のこと。首都高速神奈川6号川崎線が島を横断し、目と鼻の先には羽田空港、東京湾の沖合約5kmにはアクアラインの換気施設である「風の塔」が見える。

 浮島町は交通の結節点なので、遠くからなんとなく大きな工場が立ち並ぶ風景を見たことのある人は多いかもしれない。

 しかし、車からチラッと見るのと目の前で見るのとでは大違いだ。すでに浮島町に向かう途中から沿道の風景が一変し、工場一色の異様な雰囲気に包まれていたのだが、実際に巨大な製油所や化学工場を目の前にすると、正直、言葉を失った。

 

 

浮島町にある巨大な製油所。現実味がないくらい迫力がある。

 そこにあったのは、これまで見たこともない巨大で重厚な鉄の塊だったからだ。しかも、赤錆だらけのうえ、密集するパイプからは「プシューッ!」と水蒸気が吹き上がっている。

 
人の姿が見えないのに水蒸気を吹き上げて動く工場。その様子はまるで『ハウルの動く城』のようだ。

これはまるでジブリアニメの世界だ。