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安宅 いま日本は主要国の中でほぼ“一人負け”していますよね。誰が大儲けしているかと言えば、中東やアメリカ、ロシア、中国、英国などを含む資源・エネルギー産出国家です。ウクライナ戦争が始まってから、石油や化石燃料にかかわる業界はぼろ儲けですからね。

 例えば、アメリカの総合エネルギー企業エクソンモービル社。同社の株価は年始から上がりはじめ、脱炭素の流れで凹んでいたぶんを完全に取り戻しました。戦争で武器の在庫は一掃されましたから、軍需産業もかなり儲かるはずです。

 ロシア経済も決して疲弊していない。ルーブルはウクライナ侵攻直後に1ドル=80ルーブル弱から138ルーブルまで大暴落したものの、今では59ルーブルと爆上がり。侵攻前よりはるかに高くなっている。これも各国がルーブルでロシアの資源を買っているからです。

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小林 一方で日本円の価値は下落したまま。ウクライナ戦争の勃発後、最も大きく価値が下落した通貨だとされていますね。126円台から137円台まで落ちました。

一時は1ドル139円台に

中国はEVでも儲けはじめている

安宅 泣いているのは我々のような非エネルギー産出国家ですよ。

 僕もさすがにガソリン車に乗るのがつらくなって、今年3月からテスラの電気自動車に乗り換えたんです。テスラの社外取締役を務める水野弘道さんが友達で、彼からの勧めもあって昨年中に申し込んだのがよかったです。

尾河 すごいお勧めだったんですね(笑)。

安宅 今はガソリンとは無縁の生活を送っています。それまで乗っていたドイツ車は1キロ走るのに20円かかっていた。それが現在電気代換算でキロ5円以下。資源価格の高騰がEV化を加速させる潜在圧力であることを実感しています。

 ところがEV用電池のサプライチェーンを見ると、原料以外はほぼ全て、中国が市場の半分以上を握っている。中国はEVでも儲けはじめているのです。日本のマスコミは、ゼロコロナ政策失敗ばかり取り上げますが、長期的に大儲けは確実。このままだと日本の自動車産業もやられかねません。そうなれば日本は本当に残念な状況になってしまう。早期に手を打たないといけません。

豊田社長とイーロン・マスク

河野 日本経済の将来像を語る前に、まずは、現状の円安・インフレをどう評価するかから始めましょう。現在のグローバルインフレは何が原因なのかというと、アメリカを中心とする主要先進国が実施した大規模な財政政策と金融緩和です。

 新型コロナによる景気失速を受け、各国はこれまで様々な経済対策にお金を投じてきました。米バイデン政権は昨年、国民への現金給付を中心とした約2兆ドルの景気刺激策を実施。米GDP(国内総生産)の1割に相当する巨額の歳出をおこないました。FRBの国債購入が財源です。市場にじゃぶじゃぶとお金を流した結果、物価が急激に上がったので、今なんとか制御しようと必死なわけですね。

 バイデン大統領も11月の中間選挙の前までにはインフレは抑えておきたい。前年比で9%も上がったら低所得者層は生活できませんから。選挙にはもろに影響します。