──読みながら、ふと「シャネルちゃんたちが40代になったら、どうなるんだろう」と。
草下 それは……ちょっと恐ろしいですね。でも、彼女たちが今後、地元という《呪いの地》とどう関わっていくかは、ひとつのテーマ軸になると思います。
彼女たちはいつ「地元」の呪いに気づく?
──シャネルちゃんたちは地元を出るのでしょうか?
草下 それはまだわからないです。彼女たちが地元社会の構造に、いつ、どう気づくかなんですよね。
──シャネルちゃんたちは、気づいて目覚めるのか。
草下 もし気づいたとしても、その後で動ける人と、動けない人に分かれるんですよ。
だから、まずは気付けるか。そしてマンガの中ですが、実際に行動できるか。これからそのことを、キャラクターたちが考えていくはずです。
──行動できる人とできない人は、何が違うのでしょう?
草下 何かのきっかけで、「自分の未来には選択肢がある。地元で生きるだけじゃない人生もある」と、気づくとしますよね。
でも、地元って《住めば都》なんですよ。それがある種、呪いでもあって。
──居心地がいいんですね。
草下 ええ。たとえどんなに悪い環境でも、そこには今、自分の居場所がある。そして、地元を捨てた後の未来は、どうなるかわからない。だから、未来の不安より現状を打ち破る勇気が勝れば、行動するかもしれないですね。
ただ、先ほども言ったように、裏社会の人間は一般人より、地元を出るリスクが高いんです。
たとえば「先輩に追いかけられるんじゃないか」「地元を出たことで仲間に恨まれ、昔の犯罪を暴露されて逮捕されるんじゃないか」などですね。
これらのリスクを振り切る勇気に、どこまで懸けられるかで、未来は変わるかもしれません。
ジャンキーな20代でも、「裏」に行かなかったワケ
──草下さん自身も、「20代前半まではジャンキーだった」とおっしゃっていますよね。多くの誘惑やしがらみがあったと思いますが、草下さんが裏社会の人間にならなかったのは、なぜでしょうか。
草下 私も地方出身ですが、子供の頃から周囲にちょっと特殊な家の子が多かったんです。だから、普通に知り合う友達が裏社会の人間だったり。その流れで、高校生の頃からいろいろな遊びも覚えました。
ただ、裏社会に触れる一方で、私は表現することにも興味があったんです。で、高校を出て今後どうしよう……というときに、どんなに綺麗事を言ったとしても、犯罪は人を痛めつけることだなと思いました。