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「いくら絵が上手くても…」やってしまいがちな“現実主義的なアドバイス”で子どもの何が摘まれてしまうのか?

『子育ての「選択」大全』#3

note

「中高生にせこい損得勘定を刷り込むな」

 どんなささいなことでもいいから、余人をもって代えられない職業的な何かをもっていることが「プロ」の条件だと私は思っています。そのスペシャリティーが時代の風向きとピタリと一致していれば、“社会的な大成功”を収められるでしょう。もし風向きが違えば世間からの評価はあまり大きくないかもしれません。そこははっきりいって運だと私は思います。

 それでも自分の純粋な価値観に従って自己決定しながら生きているひとは、幸福感や満足感を高く保つことができます。それを示す研究結果もたくさんあります。

 たとえばこれ。東京都医学総合研究所とロンドン大学が共同で、60年以上にわたる大規模追跡調査の結果を分析したところ、思春期の時点で自分の興味や好奇心を大切にしたいという内発的動機が強いと高齢期の幸福感が高まるが、金銭や地位を重視する損得勘定的価値観が強いと高齢期の幸福感が低くなることがわかったそうです。

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 調査結果の報告書では、「若者に対して経済的な成功や安定を目指すように強調するよりも、自身の興味や好奇心をはぐくむ教育環境を作っていくことが、活力ある超高齢化社会の実現に向けて重要な対策であると示唆されます」とまとめられています。

 要するに、「中高生にせこい損得勘定を刷り込むな」「子ども自身の純粋な興味関心を尊重しろ」ということです。

 親から見ると損な選択を子どもがすることはままあります。でも、世間的な損得勘定を教えるよりも、本人の内的動機を大切にするほうが、本人の長い人生全体の幸せを考えたら重要だといえるのです。

 これ、VUCA時代の親に必要なリテラシーの6つめです。

正しい選択は子どもの目が教えてくれる

 思春期くらいになれば、本人が何かに対して明確な興味を示し、言葉でそれを語り始めたり、自ら行動しはじめたりするかもしれませんが、それ以前は、親のサポートがないと、子どもは自分の興味を行動に移すことが、物理的にも心理的にもできません。

 幼い子どもの内面に芽吹く自発性や主体性、興味・関心の方向性に気づいてやるにはどうしたらいいのでしょうか。

 これについても確固たるエビデンスなんて何もないですし、どんなに科学が発展してもエビデンスなんてとれるわけがない事柄だと私は思っていますが、私の取材経験をもとに言わせてもらえば、「子どもを見ること」に尽きます。