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「いくら絵が上手くても…」やってしまいがちな“現実主義的なアドバイス”で子どもの何が摘まれてしまうのか?

『子育ての「選択」大全』#3

note

 たとえば幼児が公園で小さな虫を見つけたとします。すると子どもの目が一瞬輝きます。「えっ、何これ?」「わー、すてき!」みたいに心が動くことを、「センス・オブ・ワンダー」といいます。目が輝くだけでなく、全身が躍動します。そして心の中では深い安寧を感じています。

 その瞬間を見逃さないでほしいのです。

 センス・オブ・ワンダーを感じた子どもは次に必ず、それを身近にいるひとたちに伝えたくなります。親が近くにいれば、必ず一瞬親のほうを見ます。そのときに、子どものセンス・オブ・ワンダーに共感しながら、アイコンタクトを返してあげてほしいのです。

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 「見て!」と言われたら、子どものセンス・オブ・ワンダーに共鳴しながら、のぞき込んであげてください。そして「よく見つけたね」「かわいいね」「不思議だね」などとことばを添えてもいいですし、感動のアイコンタクトを返すだけでも十分です。あえてことばにしないほうがいいことも多いと思います。

 すると、子どもの好奇心は励まされ、どんどん知的欲求が豊かになり、自分の素直な感覚にますます自信がもてるようになります。これがいわゆる自己肯定感を励ますことにもなりますし、スペシャリティーを伸ばすための恰好の養分にもなりますし、自分軸の礎にもなります。

自己肯定感とは

 自己肯定感とは、「自分にはこれができる」というような実績ベースの自信とは違います。「やればできる」という自己効力感とも違います。「自分はありのままの自分でいていいんだ」というほのかな安心感です。

 受験競争で勝ち上がって、一流企業でも出世競争を続けている自信満々なひとの中にも、自己肯定感がめちゃくちゃ低いひとはいっぱいいます。逆に自分のダメなところをさらけ出し、笑い飛ばせるようなひとはめちゃめちゃ自己肯定感が高いといえます。そこを勘違いしないでください。

 自己肯定感を育むのに成功体験なんて本当は要らないんです。自分をありのままに受け入れてくれる存在が身近にいればいいんです。

 スマホなんかに気をとられて子どものセンス・オブ・ワンダーを見逃すなんて、あっという間に終わってしまう子育てライフのすごし方として、最ももったいないことです。芸能人のインスタに「いいね」なんてしている場合ではありません。子どものセンス・オブ・ワンダーにリアル「いいね」をしてあげてください。

 スマホといえば、スマホやゲームの普及によって、ぼーっとする時間が奪われていることも、大きな社会問題だと思います。