県庁が置かれるような町は、たいてい城下町にルーツを持つ。宿場町・港町、またはそもそも“古都”だったという京都や奈良のような例外もあるが、ほとんどは江戸時代までの城下町が、その都市機能をうまく活用しながら県庁所在地になっている。幕末まで300ほどの藩が全国あちこちに散らばっていたのだから、とうぜんのことだ。
ただ、そうした中でも例外はある。たとえば、長野県の県庁所在地・長野市である。長野県には松本や上田などの城下町があるにもかかわらず、それらを差し置いて長野市が県庁所在地になった。明治初期、1871年のことだ。
そしてこの長野市、江戸時代には真田氏が治めていた松代藩の領内だったが、城下町ではなかった。長野市の発展の中心は善光寺。つまり、長野の町は善光寺の門前町として発展し、人口35万人を超える県庁所在地になったというわけだ。
その長野の町のターミナルが、長野駅だ。長野オリンピック直前の1997年10月に北陸新幹線(当時は長野新幹線と呼んでいました)が開業。いまでは東京から長野までいちばん速いタイプの「かがやき」に乗ったら1時間ちょっと、各駅停車の「あさま」に乗っても2時間とかからない。
この時間距離の短さに反して地図を見ると長野県の中ではだいぶ新潟寄りの北側にあることに驚いてしまうのだが、とにかく新幹線に乗れば長野駅はあっというま。いったいどんな駅なのか、見に行くことにした。
“なぜか県庁所在地になった町の駅”「長野」には何がある?
長野駅の新幹線の改札を出ると、まあこのあたりは特別語るほどでもないどの駅にもある自由通路だ。とても幅が広くてたくさんの人が行き交っているのはさすが県庁所在地といったところか。自由通路には長野オリンピックのエンブレムが描かれている。
長野オリンピックは1998年だから、かれこれ四半世紀。去年の東京オリンピックはあれこれトラブルを引きずりまくっているが、やっぱりオリンピックを開催した都市は、それなりにその経験を誇りに思っているということなのだろう。
ちなみに、開会式の舞台になったオリンピックスタジアムは長野駅からかなり離れた南にあり、伝説の「ふなきぃ~」は同じ長野県内でもだいぶ遠い白馬のジャンプ競技場で行われている。