文春オンライン

2022/09/25

 これはほかの方にはなかなかわからない感覚かもしれません。自分でも不思議です。『ママレード・ボーイ』で途中から出てくる北原杏樹ちゃんというショートカットの女の子をやった時も、同じ感じでした。自然にフッと役に入れないんです。

 どんなキャラクターでもパッと自分のものにできる声優さんもいると思いますけど、やっぱり私は何をやるにもどんくさくて。人が1週間でできることに1カ月かかったりするし、一つのことをやると、ほかのことが全然できません。台本を読み込んで作品に入っていくうちに、役になりきることはできるようになってきてはいましたが。

 8年やっていても、髪型がショートカットというだけで「大丈夫かな」となっていたら、人より10年遅れますよね(笑)。まだまだ自信なんて、全然なかった頃でした。

ずっとやりたかった男の子役という夢

 私、実を言うと声優を始めて最初の頃は、男の子役をやりたかったんです。小さい女の子としてしゃべるより、男の子としてしゃべったほうが、自分の声質的にしっくりくる感じがしていて。事務所にも「男の子をやりたいんです」と言いに行きました。

 でも「あなたは女の子で売ったほうがいいから」と、デビューから10年間ほど、男の役をやらせていただく機会がありませんでした。

 ずっとやりたいなという気持ちは温めていて、やっと、初めて頂いた少年役が『真・女神転生デビルチルドレン』のクール役。人間でなくケルベロス(ギリシャ神話登場する犬の怪物)でしたけど、うれしさといったらなかったですね。「オレ」も自然に言えて、吠えたり、火を吹いたり、初めてのことばかりでとても面白かったです。

 そこから、同じ音響制作会社さんのご縁で『キャプテン翼』の翼くん役につながりました。「『デビチル』で男の子役ができていたから」とオーディションを受けさせていただけて。でも翼くんは、少年役という以前に、作品が大きすぎてプレッシャーがありました。『キャプテン翼』を背負うほどのものが、当時まだ自分の中にできてなったというか、とにかく翼くんを演じることにはすごく苦労しました。