“永遠の17歳”こと声優の井上喜久子さん。30年を超えるキャリアの中でも、彼女が特に驚きを感じた「思い出の役」を紹介。オーディションの際、資料を見て思わず「二度見」してしまった役とは?

 井上喜久子さん初の自叙伝『井上喜久子17才です「おいおい!」』より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/#2#3を読む)

声優の井上喜久子さんが語った「思い出の役」とは?(画像提供:主婦の友インフォス)

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アイナ、杏樹の違和感の原因はショートヘア!?

 声優になって8年目、この頃に大きな経験だったのはOVAの『機動戦士ガンダ第08MS小隊』に出演できたことでした。ガンダムといえば、誰もが知っている国民的な作品。まだまだひよっ子だった私が、オーディションでヒロインのアイナ役に受かったのがすごくうれしくて。

アイナ・サハリン(画像:「機動戦士ガンダム アーセナルベース」公式より)

 収録は月1回くらいだったので、TVアニメのように毎週、役の気持ちを積み上げて、まとめていくということができないのは苦労しましたけど、憧れの小山茉美さんと共演できたのも光栄でした。

 何より印象深いのは、ジオン軍のアイナと敵対する連邦軍のシローとの恋です。まるで『ロミオとジュリエット』のような困難の多い恋愛で、最終的にシローは片脚を失いながらアイナと二人で生きていくんですけど、「やっぱり戦争は良くない」ということがいちばんのテーマとして描かれていて。時を経ても色あせない作品だと、今でも思っています。あと、シロー役の檜山修之くんが熱かった(笑)。あの叫び声!

 リミッターがない感じで、「そんなに?」というくらいの声量と圧でエイヤーと来るから、私も心を揺さぶられて演じることができました。ありがたいことに、『ガンダム』シリーズにはその後も2本、出演させていただいています。

 でも実は、オーディションで選んでいただきながら、アイナを演じるのは最初、自分の中で違和感がありました。おっとりしたお姉さん役や、セリフの少ない役がまだ多くてヒロインを演じるということ自体にまず慣れていなかったのと、アイナの髪型がショートカットだというところが自分とつながらなくて……。