いずれも東日本大震災と比べても桁違いに大きな被害予想ですが、発生から10年以上が経っても、東日本大震災からの復興事業は遅々としており、被災者の方々は今もなお苦労されています。そうなると南海トラフ巨大地震が起きたあとの復興は、いったいどのくらいかかるのでしょう。
この大災害が最短で10年以内に起こるという事態を皆さんはどこまで意識しているでしょうか。自分の問題として意識できているでしょうか。
そのことを私は最終講義でも強調しました。読者の皆さんもこの書籍を機に、我が身に起こる出来事として準備をしてください。防災バッグを用意するのはもちろんですが、それだけで満足してほしくありません。どのように「生き延びるのか」を真剣に考えてほしいのです。
未来に対してきちんと準備をしている人、家族、コミュニティは生き残れます。そうしてはじめて、この国も生き残れるのです。
近い将来に起こると考えられる大地震は、南海トラフ巨大地震だけではありません。「首都直下地震」もその発生が大いに危険視されています。日本の全人口の約3割が集中している地域が、東京を中心にした埼玉、千葉、神奈川の1都3県です。「首都直下地震」とは、主にその1都3県の直下を震源とします。
首都圏は大陸プレートである北米プレートの上にのっていますが、その下には海洋プレートであるフィリピン海プレートが潜り込んでいます。さらにその下にも、太平洋プレートが潜っています。
各プレートの境界では、プレートの沈み込みによる海の地震(海溝型地震)が、またそれぞれのプレート内部では、プレート自体の複雑な動きで生まれるひ
ずみによる地震が想定されます。首都圏の直下には3枚ものプレートが重なっているため、それだけ予想される震源の数も多くなるのです。
東京近辺に限ると、過去400年間にマグニチュード8規模の巨大地震が、2回起きています。一度目が1703年の元禄(げんろく)地震で、死者は1万人以上にのぼったという記録が残っています。これはフィリピン海プレートと北米プレートの境界にある相模トラフで起きた海の地震であり、推定されるマグニチュードは最大8.5です。
二度目が1923年に起こった関東大震災(大正関東地震、上図)です。これも相模トラフで起きた海の地震ですが、マグニチュードは7.9で、10万人以上の死者を出しました。