マグニチュード7クラスにも用心を
政府の中央防災会議は、元禄型の関東地震は2000~3000年に1回程度の間隔で、また関東大震災型の関東地震は200~400年に1回程度の間隔で発生すると予測しています。すると次の関東大震災型の地震は、2120~2320年の間に起こると考えられます。
ただ、見逃してはならないことがあります。元禄地震と関東大震災の2つの巨大地震の前には、少しだけ規模の小さいマグニチュード7クラスの地震がいくつも発生していることです。たとえば関東大震災の約70年前である1855年には安政江戸地震が起きています(マグニチュード7程度)。7000人以上の死者が出た、東京湾北部を震源とした直下型地震です。
このような例から、マグニチュード8クラスの巨大地震の前にも、マグニチュード7クラスの直下型地震が起こることが十分にあり得ます。その確率は今後
30年間に約70%であると、中央防災会議は予測しています。
中央防災会議は、首都圏に発生する可能性のあるマグニチュード7クラスの地震をシミュレートし、19のタイプに分けました。これらは被害を予測する目的でつくられ、どれかが必ず起こるというものではありません。現実には、首都圏ではどこで直下型地震が起きてもおかしくありません。
なかでももっとも被害が甚大になると予測されるのは、都心南部直下で、フィリピン海プレート内に震源が想定されたマグニチュード7.3の地震によるものです。
震度7とは、テレビやピアノが壁にぶつかり、人は動くことができないほどの揺れです。もっとも心配されるのは、建物の倒壊です。日本の建築物の耐震性は、1981年の建築基準法改正によって大きく向上したものの、それ以前に建てられた建造物は、60%以上が震度7では全壊すると推定されています。
また、家屋の焼失と全壊が最大で約61万棟、火災や建造物の倒壊による死者が最大で約2万3000人となり、地震発生直後には都区部の約半分で断水と停電が起こると考えられます。さらに交通機関では、地下鉄で1週間、JRや私鉄で1か月ほどの運行停止が、主要道路でも1~2日は通行不能状態に陥ることが予想されています。