予測の根拠となるのは、もちろんこのデータのみではありません。地震の活動期と静穏期の周期から次の地震の発生時期を推定する方法も用います。活動期と静穏期についての研究によると、西日本では活動期と静穏期が交互に訪れことがわかっていて、現在は活動期に入っているのです。
1995年に起きた阪神・淡路大震災は、正式には「兵庫県南部地震」と呼ばれ、この地震も現在の西日本が活動期に入っていることの証左です。
西日本では、南海地震発生の40年くらい前から発生後10年ぐらいの間に、内陸の活断層が動き、地震発生回数が多くなるというデータがあります。確かに、阪神・淡路大震災(1995年)の発生後に犠牲者を出した地震が頻発しています。そしてこのデータも、南海地震の予測に利用されているのです。
過去の活動期の地震の発生パターンを統計学的に処理して最近の地震活動データにあてはめてみると、次の南海地震が起こるのは2030年代後半という予測が出ました。さらに、過去に繰り返された地震を観測した、地震活動の統計モデルから予測したところ、次の大地震の発生は2038年ごろ、という結果が出ました。
この2038年ごろという予測は、妥当な時期と考えられます。
前回の南海地震は1946年、前々回は1854年です。その間は92年で、南海地震の単純平均間隔である110年からみると短いですが、この92年という時間を軽視せず、最短で起きる間隔だと考えると、2038年となります。他の予測結果とも一致しています。
様々なデータから予測された、もっとも近い南海地震の発生時期が2030年代です。京都大学元総長の尾池和夫博士(高知県出身で現・静岡県立大学学長)も、南海地震は2038年頃に起こる、と予測しています(尾池和夫著『2038年南海トラフの巨大地震』マニュアルハウス刊)
私自身はこれらのデータから、どんなに遅くとも2050年までには次の巨大地震が発生するだろうと考えています。
津波は「ビッグウェーブ」ではない
南海トラフ巨大地震は、マグニチュード9クラスの地震エネルギーを発生させ、震度7の揺れが九州から静岡周辺までを襲います。その結果、巨大な津波も発生します。東日本大震災で生じた大きな被害が、揺れよりも津波によるものだったことを知っている人も多いかもしれません。
そもそも、津波はなぜ起きるのでしょうか。また、サーファーが憧れるビッグウェーブとどう違うのでしょうか。
津波とは、大きな地震で海底の広い面積が急激に隆起することによって、その場所の海水が押し上げられ、そのまま上昇して海面を大きく盛り上げる状態のことです。この大きな盛り上がりが、そのまま、水の塊となって水平方向に広がっていきます。
しかも津波の速度は、水深が深い場所ほど速まります。水深2000mの場所では時速約500㎞と、飛行機並みの速度で進みます。水深200mでも時速160㎞と、高速特急並みです。
そして水深10mでは、東日本大震災のニュース映像で見たような速度となります。沖合に比べたらスピードは遅くなりますが、時速40㎞と自動車並みの速さです。よって、津波を見てからではオリンピック選手でも逃げることは不可能です。