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不公平かつ時代遅れな日本の提供精子
医療機関では、提供された精子をいったん凍結し、一定期間提供者を観察して健康状態に問題のないことを確認して初めて使用するが、個人間取引では感染症検査などは一切行われず、射出された精子をそのまま自分で膣内に注入することが多い。中には提供者がセックスを求める場合もあるという。感染症などのリスクを伴うことは言うまでもない。
日本では、安全な提供精子の使用を求める女性の希望に、医療現場が応えることができていないのである。これまでのようにヘテロセクシュアルの法律婚カップルに限定した対応のみというのは、どう考えても不公平かつ時代遅れであろう。
※生殖医療の発展に伴って生まれた複数の親子関係や、セックスと子どもを持つことの乖離など、全文は「週刊文春WOMAN2022秋号」に掲載されています。
石原 理(いしはらおさむ)/生殖内分泌学者。1954年東京都生まれ。医学博士。群馬大学医学部卒。東京大学医学部産婦人科、英国ロンドン大学ハマースミス病院などを経て、2002年埼玉医科大学教授、22年より女子栄養大学教授。生殖補助医療監視国際委員会のメンバーとして、生殖医療に関連する国際統計の収集・分析・定期報告に従事する。著書に『生殖医療の衝撃』(講談社現代新書)ほか。世界の生殖医療の最先端をレポートする著書『ゲノムの子』(集英社新書)を11月17日刊行予定。