当時、中国当局は自国の国民管理体制に由来したコロナ対策の正しさを誇っており、竹内の作品はそうした見解を強く補強する内容だった。
結果、彼は中国で一気に名を知られていく。まず2020年12月30日、党中央機関紙『人民日報』ウェブ版がトップ記事で彼を報道。さらに2021年1月6日には、中国外交部の記者会見で華春瑩報道官が『後疫情時代』を名指しで「中国の取り組みの真実を偏見なく記録した」と大絶賛した。
いっぽう、竹内は同年2月12日、「世界で一番手に入れるのが難しい」(本人ツイッター)とされる中国の永住権(永久居留身分証)を取得。同年5月17日には、なんと中国の公務員試験で「竹内亮」の名前を選択する問題までも出題された。
中国において、当局が個人や作品を賛美する行動は、ときの政権から見た「政治的に正しい」存在にお墨付きを与えることを意味する。
コロナ禍以来、中国社会は海外との接点が激減し、内向きムードが強まった。また、習近平政権はゼロコロナ政策の正しさを強調する目的から、愛国・愛党を旗印とする国民向けの宣伝をいっそう強化した。
結果、当局の主張に対する庶民の信頼感は増幅され、「政治的に正しい」竹内の人気も高まった。
「日本では中国の悪いことを伝える報道が多い。でも、亮叔(リヤンシユー=竹内)の動画は、中国のいい部分をたくさん伝えているんです」
今年9月17日、一時帰国中の竹内が有明で開いたファンイベント会場で、二十五歳の中国人女性はそう評している。
息子を人民解放軍式訓練に
〈息子が21日間の軍隊サマーキャンプから帰って来た。運動も勉強も嫌いでゲーム大好きな息子だが、成長して帰って来た。「男子3日会わざれば刮目して見よ」とはこの事だ〉
竹内は2020年8月16日、ツイッターにこう投稿した。
文章とともにアップされていたのは、左肩に中国国旗が縫い付けられた軍服姿で、銃らしきものを抱えた10代前半の少年の写真。背後の迷彩色の車両には「聴党指揮,能打勝仗,作風優良」(中国共産党の指揮を聞けば勝利でき、良き振る舞いができる)とスローガンが書かれたプラカードが貼り付けられている。
少年は竹内の息子だ。撮影地は蘇州野狼軍事夏令営。江蘇省にある児童向けの軍事教育施設だった。 トップに「永遠跟党走」(永遠に党とともに歩む)と書かれた同施設のホームページによると、設立は2010年。中国人民解放軍で五年以上勤務した元軍人のもと、軍隊式の厳しい訓練で児童の生活習慣を改める教育が売りだ。コースは数日間からあるが、竹内は息子を計21日間のヘビーなコースに送っている。