軍隊が身近な中国において、同様の児童教育施設は近年人気である。しかし、広東省を拠点に25年間在住し、中国人の妻を持つ企業経営者の男性(46)は話す。
「違和感は大きい。たとえ配偶者が中国人でも、日本人として越えるべきではない一線がある。自分の子を行かせたいとは絶対に思えない」
人民解放軍は、1989年の天安門事件で数千人(諸説あり)の学生や市民を虐殺した軍隊だ。
いかに行儀見習いが目的でも、わが子にそんな軍の銃を持たせ、毛沢東思想や党の指導を賛美する軍歌をあえて歌わせたいと考える日本人は、普通ならばまずいない。
竹内はどのような人物なのか?
千葉県出身の彼は、専門学校を卒業後にテレビ東京「ガイアの夜明け」やNHK「長江 天と地の大紀行」などの制作に携わる。ただ、いずれも大手局の下請けを担う制作会社のいち社員としての仕事だった。
やがて中国人女性と結婚し、2012年に中国移住を決定。二年後、妻の趙萍(ヂヤオピン)の故郷で「和之夢」を設立した。ちょうど「中国夢(ヂヨングオモン)」(中国の夢)を掲げた習近平政権が成立した翌年のことだった。
口癖は「ニセ日本人」
2015年から、在中日本人や在日中国人が主人公の映像シリーズ『我住在這里的理由』(私がここに住む理由)を配信し、ジワジワ評判を広げた。2017年に彼を取材した日本の大手通信社の記者は話す。
「撮影時はタメ口に近い口調で、初対面の相手にもグイグイ話しかける。事前にストーリーを作らず、台本無しの撮影にこだわっていた」
テレビ業界出身者らしいラフな服装と振る舞いで、日本の映像制作・編集技術を用いつつ、中国人スタッフと中国語でドキュメンタリーを作る。そんな彼の作品が、現地の対日感情を和らげ、新しいタイプの日中の架け橋となったのも事実だった。
2018年に竹内の密着取材を受けた、北京在住の40代の日本人女性は、当時の様子をこう話す。
「中国での活動が楽しくて仕方ない様子でした。若い中国人の軽薄なノリを過剰に受け入れている印象もあり、『僕はニセ日本人(假日本人=ジヤアリーベンレン)』が口グセ。周囲のスタッフも似たような陽気な感じの人が多かった」
とはいえ、現実の中国は明るいノリだけで向き合える国ではない。この女性は当時、当局に睨まれやすい立場の中国人アーティストの公演をサポートする仕事に就いていた。
「ひどい現場でした。地元の政府関係者が、プレッシャーを与える目的で会場の最前列にぎっちり座り、公演中に立ち上がった聴衆を公安がサスマタで押さえつける。しかし竹内氏は、撮影中もその後の配信でも、中国のそうした政治的な問題は目に入っていないように見えました」