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「よもや何かを決めることができる会議体ではない」汚職が次々と明るみに…東京オリンピック大会組織委の“実態”とは

堂場瞬一さん、山口香さん特別対談 #1

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 社会, スポーツ

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山口 同感です。オリンピックのムーブメントは、試合だけじゃなくて、海外から来たアスリートと市民の交流という部分もとても大切。それをせずに試合だけをしても、オリンピックじゃないと、感じていました。異様ですよ、あの光景は。

堂場 2019年のラグビーワールドカップでは、ジャパンの快進撃で、みんながにわかファンになって、スタジアムの周りで、飲食店で、熱く語り合っていた。東京五輪は、我々の世界と全然関係ないところで行われていて、「これをオリンピックと呼んでいいのか」と感じていました。

山口 オリンピックはスポーツの祭典と言われますが、間違いなく、お祭りではなかったですよね。

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あれから1年。関係者が続々と逮捕される汚職事件が発覚

堂場 東京五輪から1年が経ち、もっときちんと検証すべきなのではないかと思っていたところ、大規模な汚職事件が発覚しました。そもそもオリンピックでは、総括的なレポートは作成されるんでしょうか?

山口 大会組織委員会も報告書は作成し、総括はしているのですが、一般の方々が「総括すべき」だと思っているところとのズレはあったでしょうね。今回の汚職事件を受けて、再度、総括すべきだと思いますが、大会組織委員会はすでに解散してしまっています。

堂場 検証する組織がないのはおかしいですね。メディアもその役割を果たしているとは言えません。

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 東京地検特捜部は9月6日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の元理事、高橋治之容疑者らを受託収賄容疑で逮捕。大会スポンサーからも、逮捕者が出ている。

 

 紳士服大手「AOKI」から前会長の青木拡憲容疑者ら3人。同じく大会スポンサーであるKADOKAWAから、前会長ら3人が贈賄容疑で逮捕されている。

 

 東京地検特捜部は、スポンサーから支払われた、合計1億2700万円を、賄賂と認定。

 

 大会組織委員会の会長や理事は、みなし公務員とされ、職務に関する金品の受領を禁じられている。9月27日には、広告会社「大広」の執行役員、谷口義一容疑者も、贈賄容疑で逮捕されている。

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高橋治之氏 ©時事通信社

堂場 続々と関係者が逮捕されていますね。オリンピックのことを「集金と分配」のシステムだとしか考えていない人が、これだけ存在していたとは。

山口 堂場さんの小説でも、そう主張する大学教授が登場して、マスコミから干されてしまいますよね。あれは私のことかと思いました(笑)。

堂場 正しいことを言うと、干されてしまうのが、この世の中です。ところで、山口さん、上限35人の大会組織委員会の理事とは、どういう存在なのでしょうか。