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「よもや何かを決めることができる会議体ではない」汚職が次々と明るみに…東京オリンピック大会組織委の“実態”とは

堂場瞬一さん、山口香さん特別対談 #1

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 社会, スポーツ

note

堂場 今回のオリンピックで、スキップという判断ができなかったのは、そういう人たちがたくさんいたからでしょう。スキップしてしまうと、集められたお金をどうするか、という問題が出てきますからね。

山口 出版界も当事者になっていますよね。

堂場 私も、KADOKAWAという出版社から、本を出しています。汚職にかかわった企業と今後、どうやって取引をするのか、そんなことでも悩んでいます。

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山口 AOKIも、KADOKAWAも、賄賂を出してまでスポンサーになって、スポンサーになる価値はあったのでしょうか。その企業で働く社員たちは、そう思っているはずです。高橋元理事に賄賂を払えば、スポンサーフィーも値下げされる。この事件には、スポーツにとって大切なフェアネスも存在しない。

堂場 公式スポンサーは、裏金で買うものという印象はぬぐえません。

 

山口 さらに私が問題だと感じているのは、主導した人たちの年齢の高さです。1964年の成功体験から脱却できなかった人たちの認識のずれを感じます。

堂場 1964年当時、オリンピックを誘致したことで、首都高ができ、新幹線が開通した。でも、今の日本で、これ以上、東京を開発しても仕方ない。

山口 オリンピックの理念も当時と違いますよね。戦後19年目の東京五輪は、世界から人を呼んで、日本がどんな国かを知ってもらう意味もあった。だけれど、2012年のロンドンも、ましては2024年のパリなんて、どんな街かを知ってもらう必要はないでしょう。

(後編に続く)

【プロフィール】

堂場瞬一(どうば・しゅんいち)

1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、「刑事の挑戦・一之瀬拓真」シリーズ(以上、中公文庫)、「アナザーフェイス」シリーズ、「ラストライン」シリーズ(以上、文春文庫)、「警視庁追跡捜査係」シリーズ(ハルキ文庫)、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ(講談社文庫)。

2020年には、出版社の垣根を越えてオリンピックを題材にした「DOBA2020プロジェクト」に挑戦、スポーツ小説を4カ月連続で刊行した。

 

山口香(やまぐち・かおり)

1989年に筑波大学大学院体育学修士課程修了。1978年、第1回全日本女子柔道体重別選手権大会で最年少で優勝を果たし、以後10連覇。世界選手権でも数々のメダルを獲得。88年ソウル五輪で銅メダル。89年に現役引退。2000年シドニー五輪、2004年アテネ五輪で日本柔道チームのコーチを歴任。2020年6月まで日本オリンピック委員会(JOC)の理事を10年間務め、現在は、筑波大学で教鞭を執る傍ら、後進の指導にあたる。

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INFORMATION

堂場瞬一さんと山口香さんによる対談の全編動画は、「文藝春秋 電子版」で有料版で配信されています。

オリンピックを殺す日 (文春e-book)

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2022年9月9日 発売

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