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今回の「五輪汚職」の再発を防ぐために

堂場 汚職事件の再発を防ぐにはどうしたらいいでしょうか?

山口 それは第三者委員会や、調査委員会を立ち上げることです。第三者の客観的な目で、汚職の構造を調査することだと思います。

堂場 まさにそうですよね。東京地検特捜部がその役割を担っていますが、捜査機関が調べて初めて、何が起きていたかがわかるなんて、こんな恥ずかしい話はないです。

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山口 このままでは、すべての責任を逮捕された人たちに押し付けて、「悪い人がいたね、それは残念だったね」となりかねない。2024年にパリ五輪・パラリンピックを開催するフランスは、違う対策をしていますね。

 

堂場 五輪を巡る汚職を防止するために、組織委員会のほか大会に関係する企業などを対象に、公的資金の不正流用がないかを独立した政府の監査機関がチェックする、というものですね。日本では、法整備は難しいんでしょうか。こんな汚職事件を起こしたシステムを放置したままなんて。ドーピングはあんなに細かく調査しているのに。

山口 ドーピング検査自体は、フェアネスのためにあっていいと思います。ただ、アスリートは、24時間すべての滞在場所を伝えて、朝5時でも、6時に来ても検査に対応しなくてはいけない。これは人権侵害に近い。そこまでアスリートに求めるのに、運営する側は、ここまでずさんというのは、最悪のダブルスタンダードです。  

小説『オリンピックを殺す日』を読んで

山口 堂場さんの小説『オリンピックを殺す日』は、とても刺激的でした。オリンピックにかかわるメディア、ジャーナリスト、スポンサー、アスリートという立場それぞれでの葛藤が描かれていて、「オリンピックの関係者」が立ち止まって、考えるべき問題がたくさん書かれていました。

堂場瞬一さんの小説『オリンピックを殺す日』(文藝春秋)

堂場 1984年のロサンゼルス大会以来、オリンピックは商業主義に毒されつつあるとは感じていましたが、東京五輪で、この大会が「集金と分配」のシステムと化していることが明白に露呈してしまった。それをうけての問題提起というか、新しい国際スポーツ大会のカタチを提案したいとおもった部分もありました。ただ、エンタメ小説ですから、サスペンスとしても、愉しんでもらえるように書いています。

山口 舞台設定は、東京オリンピックの数年後、まさに今くらいでしょうか、世界的企業が、新たなスポーツ大会「ザ・ゲーム」を企画している。その大会は、メディアを排除して開催される。この大会を仕掛けている謎の組織の正体を追いかける記者が、世界中を飛び回る。「ザ・ゲーム」は実際に成功するのか、アスリートはどういう選択をするのか、など、読みどころも満載でした。