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選手が神輿に乗っている時間には必ず終わりが来る

堂場 何かを言えば、批判が飛んでくる時代です。だけれども、それを乗り越えて発言してほしいんです。練習に打ち込んでいる、ほんの5パーセントの時間を使って、世間がどうなっているかを見渡してほしい。「余計なことは考えないで、競技に集中してください。他のことは周りがしますから」という神輿に担がれているようじゃだめですよ。

山口 芸能の世界の方でしたら、それでもいいかもしれません。長きにわたって、神輿に担がれて仕事をすることもできますから。アスリートは違います。選手が神輿に乗っている時間には必ず終わりが来ます。自分で思考して、活動すべきなんです。

 

堂場 さらに残酷なことに、その期間は、とても短い。そんなに守られていたら、メンタルも鍛えられないでしょう。

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山口 自分の考えで発言し、社会の反応を受け入れることを積み重ねて、経験値を上げていってほしい。アスリートからの発信は、スポーツ界を変える力になると信じています。

堂場 山口さんとの対談はとても有意義でしたが、ぜひ次回は、現役のアスリートにも登場してもらって、オリンピックの在り方について発信してもらいたい。司会と執筆は私がやりますから(笑)。

【プロフィール】

堂場瞬一(どうば・しゅんいち)

1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、「刑事の挑戦・一之瀬拓真」シリーズ(以上、中公文庫)、「アナザーフェイス」シリーズ、「ラストライン」シリーズ(以上、文春文庫)、「警視庁追跡捜査係」シリーズ(ハルキ文庫)、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ(講談社文庫)。

2020年には、出版社の垣根を越えてオリンピックを題材にした「DOBA2020プロジェクト」に挑戦、スポーツ小説を4カ月連続で刊行した。

 

山口香(やまぐち・かおり)

1989年に筑波大学大学院体育学修士課程修了。1978年、第1回全日本女子柔道体重別選手権大会で最年少で優勝を果たし、以後10連覇。世界選手権でも数々のメダルを獲得。88年ソウル五輪で銅メダル。89年に現役引退。2000年シドニー五輪、2004年アテネ五輪で日本柔道チームのコーチを歴任。2020年6月まで日本オリンピック委員会(JOC)の理事を10年間務め、現在は、筑波大学で教鞭を執る傍ら、後進の指導にあたる。

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INFORMATION

堂場瞬一さんと山口香さんによる対談の全編動画は、「文藝春秋 電子版」で有料版で配信されています。