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若本 あらかじめ考えて当てはめようとすると、新鮮さがなくなるよね。アドリブはその場で出てくる閃きみたいなものが肝なんだ。ワザとらしいのはダメだね。視聴者の腹の底から納得してもらえれば成功。

77歳の今も毎日2時間のトレーニング

――77歳の現在もトレーニングは続けてらっしゃるんですか。

若本 続けているよ。身体的トレーニングも含めて、呼吸法、ボイストレーニングは2時間ぐらいやるよ。

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――自分の親と比べたら失礼ですが、年齢を重ねると、気力は落ちていくじゃないですか。新しいことを挑戦しようという気持ちが湧かなくなってしまう。年齢を重ねても、自分を奮い立たせるにはどうすればいいですか?

若本 それはね、親を責めちゃいけない。僕は、この声優というものをもっと深めていくという強烈な意識があるから、自分を奮い立たせることができるわけでね。そして、それなりの身体を作っているから。思いだけじゃできないよ。

 僕は今までの経験の中から「こうしたら良いんじゃないか」というものを紡ぎだすキャリアを持ってるから……。

「この役はこういうセリフ回しで、こういう声を出せば、この真髄に到達するんじゃないか」と頭でわかっていても、裏打ちされた技量が足りないと、そこへ追いついていかない。これは芸能と言われるものの、大半のありようじゃないかな。俳優も、歌手もお笑いも……。そこに追いつくためには、訓練が欠かせない。鍛錬も、どんどん改良していく。

 でも僕が思うに、人間、60歳や70歳で引退したら、今まで培ったせっかくのキャリアがもったいない。なにかを生涯続けていくべきだと思うんだよね。そうしないとどんどん年齢的に弱っていく一方だから……。

――その通りですね。

若本 ある程度ベテランになってきても、やっぱり飢餓感が欲しい。芸の世界に入ったらね、のし上がっていかないとつまらんでしょ。自分というものを出し切っていける次元へ昇らないと。そこから先は、自分のための鍛錬が必要なんだよね。

若本規夫のすべらない話

若本 規夫

主婦の友社

2022年3月25日 発売

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