文春オンライン

連載クローズアップ

「嘘を装い続けることが耐えられなかったのでは」イギリス王室の歴史を変えた…ダイアナ妃の“想像を絶する心境”

クリステン・スチュワート(俳優)――クローズアップ

2022/10/14
note

 取材当日、カジュアルなスウェットの上下にハンチングという、ストリート・ファッションで現れたクリステン・スチュワート。本作でのスタイルからの変貌ぶりにこちらが驚く様子を見て、「私のスタイルは毎日変わるの」と愉快そうに答えた。

 いまハリウッドで彼女ほど自由な俳優もいないだろう。『トワイライト』シリーズで絶大な人気を誇りながら、ハリウッドの王道を歩むことなく、ジーン・セバーグに扮した『セバーグ』や、ブラジルのウォルター・サレス監督による『オン・ザ・ロード』など、多彩な選択で観る者を驚かせてきた。プライベートでも、バイセクシュアルであることを隠さず、積極的に発言している。そんな彼女が新作『スペンサー ダイアナの決意』で挑んだのが、世界中から愛されたダイアナ元皇太子妃だ。

クリステン・スチュワートさん ©Kazuko Wakayama

 本作はダイアナがチャールズ皇太子との離婚を決意したと言われる、1991年、クリスマス休暇の3日間を描く。

ADVERTISEMENT

「ダイアナ妃が亡くなったときのニュースはよく覚えている。とはいえアメリカで育った私は、もともと彼女に特別な感情があったわけではない。最初にこの映画の話がきたときは、私が演じるなんてクレイジーだと思った(笑)。でもパブロ・ラライン監督の的確なヴィジョンと彼女に対する愛を感じて、演じたいと思わせられた」

 スチュワートの役作りへの献身ぶりは有名だが、誰もが知るアイコンを演じるにあたって、これまで以上に時間をかけたリサーチをしたと語る。

「可能な限り彼女のことを調べて、彼女に浸り、私なりの像を作り上げたいと思った。彼女の声は特別だったから、声色やアクセントをマスターし、立ち振る舞いを学んだ。それから衣装。ダイアナ妃はファッション・アイコンでもあったから、衣装は最重要だった。ラライン監督も大変なこだわりを持っていて、実際にダイアナ妃が着ていたデザインも参考にして。衣装がどれほど演技の助けになったかわからない。でも一旦研究し尽くしたら、現場ではただ集中することだけを考えた。会ったことがないのにとても奇妙だけど、彼女がすぐ側に居るように感じられた。いまはダイアナ妃のことが大好きになった」

 映画を観れば、そんなスチュワートの発言も頷ける。子供たちへの愛と自身の孤独に引き裂かれながら、歴史を変える決断を下す逡巡が痛切に伝わり、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。

 エリザベス女王の逝去で英国王室に再び注目が集まる中、彼女はこう持論を披露する。

「王室は権威と因習の象徴でありながら、一方で人々の憧れと心の拠り所でもある特別な場所。でもダイアナ妃の場合は、王室に入って初めて自分はそこに適応しないということに気づいた。その心境は想像を絶する。最終的に彼女は、自分自身と、自分が愛する人々や愛されたいと思う国民に嘘を装い続けることが耐えられなかったのではないかと思う。決断を下した彼女は、とても勇気があったわ」

Kristen Stewart/1990年、米ロサンゼルス生まれ。12歳で出演した『パニック・ルーム』で注目を浴び、2008年からの『トワイライト』シリーズで一世を風靡。その後は『カフェ・ソサエティ』(16)『パーソナル・ショッパー』(16)『チャーリーズ・エンジェル』(19)など多彩な作品に出演しつつ、カリスマ的な人気を誇る。

INFORMATION

映画『スペンサー ダイアナの決意』(10月14日公開)
https://spencer-movie.com/

「嘘を装い続けることが耐えられなかったのでは」イギリス王室の歴史を変えた…ダイアナ妃の“想像を絶する心境”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー