「ハチ公のふるさと」には何がある?
そういうわけで、大館駅にやってきた。大館駅は秋田県の北にある。秋田駅から奥羽本線の特急「つがる」でおよそ1時間半。
ちなみに県境を跨いだ青森県の弘前のほうが近く、同じく特急「つがる」で30分ほどしかかからない。東京から行くならば、秋田経由ではなく新幹線の新青森経由のほうがいいだろう。
いずれにしても東京からは約4時間、秋田県の北の端っこに、ハチ公のふるさとがある。
ハチ公が上京したその駅、大館駅はその町の玄関口だ。さぞかし立派な駅舎が……といいたいところだが、ちょうどいまは新駅舎への建て替え工事の真っ只中。おかげで駅舎はプレハブの仮のものが置かれているだけで、その脇に工事の囲いが張り巡らされていた。
あれ、肝心のハチ公像は…
肝心のハチ公像はというと、以前は駅前の広場にあったのだが、いまは駅のすぐ近くにある観光施設「秋田犬の里」の玄関に建つ。まるで渋谷のハチ公像とそっくりで……というか、渋谷のハチ公像をマジマジと眺めたことはないのでなんとも言えないが、まあとにかく愛らしいハチ公さんの像があった。
ハチ公は、秋田犬だ。もともと秋田の山奥の狩りで活躍していたマタギ犬がルーツで、闘犬の犬としても使われるようになっていた。
闘犬には大型犬のほうが向いている、ということで海外の大型犬の血も取り入れられていったが、日本オリジナルの犬として保存すべきとする風潮が高まって、1931年には国の天然記念物に指定。そしてその直後、ハチ公さんの忠犬物語が一世を風靡することになる。
つまるところ、秋田犬は大館生まれの日本犬。そのうちの一頭が、ハチ公だったというわけだ。秋田犬の里では、そんなあれこれを含めた展示があり、あとはホンモノの秋田犬を見ることもできる。2019年にオープンした新しい施設で、オープンに合わせてハチ公像も駅前から移転してきた、というわけだ。
秋田犬…というか、むしろハチ公の町「大館」
秋田犬にまつわるあれこれ、というよりはハチ公にまつわるあれこれは、大館の町のあちこちで見られる。
大館の中心市街地は大館駅前……ではなくて、そこから南に離れて長木川を渡った先にある。
JR花輪線の東大館駅の近くに昔ながらの大館の市街地が広がっているのだが、その中軸の商店街の名は「ハチ公通り」。かつて大館城というお城があったところの近くには秋田犬会館があり、その目の前にもハチ公の像が建つ。秋田犬=ハチ公という人口に膾炙したイメージそのままに、大館は渋谷をはるかに凌駕する、徹底的なまでにハチ公の町なのである。
といっても、本来大館はハチ公の町ばかりではない。それは大館の駅の周りを少し歩けば見えてくる。