「以前、被害者から『助かります』『役に立ちます』と言われていたから(気象情報を)送っていました。彼女はけっこう、仕事で無理をするところがある。ちゃんとご飯を食べろよというメッセージを込めて、食事の写真も送っていました。そういうふうにしていたのは、彼女に付き合っている人がいないと思っていたからです。彼女は時折、友達の結婚話を楽しそうにすることがあり、その時に『付き合っている人いるの?』と聞いていました。令和3年の5月(事件の前月)にも、『付き合っている人いるの?』『結婚願望はあるの?』と訊きました。答えはいずれも、ノーでした」
宮本被告の2点目の主張は、6月7日についてだった。この日、宮本被告と稲田さんは宮本被告の誕生日を祝って居酒屋で食事をしていたことが法廷で分かっている。稲田さんの交際相手は、稲田さんが宮本被告に対して「もう店には来ないで欲しい」と告げたと証言している。しかし宮本被告は、その証言に検察が言及していない点を指摘した。
「その日、被害者から誕生日プレゼントをもらいました。白ワインでした。その数日前に店に行った時にショートケーキを出してもらっていましたから、まさかプレゼントをもらえるとは思っていませんでした。これについては取り調べされた時に、取調官から『お前、プレゼントもらっているやろ』と言われたので、検察の方もよくご存じだと思います」
わざわざ誕生日プレゼントを用意してくれた稲田さんが「出禁」を通告するはずがないという主張のようだ。
「彼女は小学生の高学年から高校まで、すごく苦労していた」
3点目は宮本被告が、稲田さんが前の職場で働いていた頃から尊敬するにいたった彼女の人柄についてだった(宮本被告は裁判を通じて稲田さんへの好意を認めるような発言はしていない)。
「彼女は小学生の高学年から高校まで、すごく苦労していた。出会った頃も、大学で心理学を学びながら、学費などは親に頼らず、自分自身でまかなっていた。自分が学生だった時期は親のすねをかじって、生活をしていた。自分にはとても真似できないことで、『すごいな、この子は』と思っていました。ある時、お父さんお母さんが大好きだという話を聞きました。さらに、離れたところで暮らすお兄ちゃんがいるとも聞きました。彼女は『私が大好きなお父さんとお母さんの面倒をみるんです』と話していました。彼女は他にも多額なお金が必要だったようで、そのお金も自分が稼いで準備する、と。私はその時、『すごい』を通り越して『かなわない』と尊敬の念を持つようになりました。名前のとおり、『真に優しい子なんだね』と彼女に言ったこともあります」