豪華絢爛な空間を活かして
キャバレーとしての役目を終えたあとでも、その豪華絢爛な空間を活かしてイベント会場として活用されている場所もある。細部にまでこだわった内装、丈夫に作られた什器は、映像作品やスチール撮影にもぴったりだ。
1969年の誕生から1980年の改築を経て、2005年にはライブ&イベントホールとして生まれ変わった元キャバレー「クラブ月世界」。神戸三宮駅から徒歩5分、東門街という歓楽街のアーチをくぐるとまもなく、大きなネオン看板が見えてくる。
扉を開けると短い廊下の先に薄暗いホールが広がっていた。ホールの奥には半円形のステージを囲むように優美なソファが並び、ダンスフロアの頭上には吹き抜けいっぱいに広がるシャンデリアが、エレガントな気分にさせる。階段や客席でも幻想的な照明があたりを照らし、非日常の演出をしていた。
訪れた日はバーレスクとドラァグクイーンのショーが行われていた。作りこまれた世界観の中で、非日常を表現するパフォーマンスは、キャバレーという場所によく馴染み、終始夢を見ているような浮ついた気分だった。
東北最後のキャバレー
北前船の寄港地として繁栄した港町、山形県酒田市。歴史ある料亭や割烹料理店、スナックやバーが点在する飲食街に、東北最後のキャバレーとして残ってきた「白ばら」がある。
正確には、キャバレーとしては2015年に営業を終了し、その後クラウドファンディングによって2017年に復活。イベント会場や飲食店として営業が続けられてきたが、今年の12月30日をもって閉店する。現在同物件は新たなオーナーを募集中だ。
白ばらの向かいには、明治時代に開業した料亭を利用した施設「山王くらぶ」が建つ。北前船の寄港地として栄えた往時の料亭文化を伝えるものとして、国の登録有形文化財となり保存されている。キャバレー白ばらも時代が違うだけで同じく、高度経済成長期と社交文化を今に伝え、大切に守られてきているではないか。
築50年以上経つ白ばらは老朽化が見えるものの、ズラリと並ぶベロアのソファ、宮殿のような雰囲気の内装、ステージに輝くネオンサイン、豪華なシャンデリアなど、この時代特有の意匠がふんだんに見られ、歴史的価値の高い貴重な存在であるのは間違いない。一刻も早く文化財に指定し、保存されるべきである。