しかも、こういった事例は枚挙にいとまがない。
「警察は身内びいきの組織です。警察署内での自死や拳銃を使った自死など、警察へ抗議するかのような自殺方法をとった警察官のニュースは全国で何度も流れています。
ですが、これまで原因が究明されることは少なかったし、パワハラ加害者がそのままなんのお咎めもなし、というケースも“普通のこと”。それに記者クラブ加盟社は警察を批判する記事は書きづらいですから、大きな社会問題になることなく、風化していくのがこれまでの常でした」(全国紙記者)
「週刊文春」(2016年3月17日号)も警察官の自殺を報じている。
田園調布署に勤めていた警察官2人が相次いで同署のトイレで拳銃を使って自殺。亡くなった2人が残したメモには、同じ人物によるパワハラを疑わせる内容が記されていた。名指しされた人物は“パワハラ常習犯”であり、「今まで何人もやめさせてきた」と豪語していたという。
大勢の前で怒鳴るなど、公衆の面前で日常的にパワハラが行われていたというが、同署は“パワハラはなかった”と判断し、2件の自殺の原因は不明とした。当該上司への処分は訓戒処分にとどまり、同氏は退職したものの“依願退職”扱いとなっている。
世の中は大きく変化したが…
しかしこの事件から約6年が経ち、世の中は大きく変化した。警察組織も変わらざるを得ない状況になっているようだ。
「実は兵庫県警ではパワハラについて署員らからの告発が相次いでいて、毎月のように処分者が出ているんです。さすがに自殺者を出してしまったという負い目があるのか、ここ数年は隠さず粛々と処分している印象ですね。
ただ、今回は権力関係が逆転するような“逆パワハラ”。パワハラでの処分者が続出している兵庫県警のなかでも異質です。県警担当記者の間でも『時代は変わったのか』と驚きがありました」(前出・社会部記者)
パワハラ問題に詳しい弁護士の井口博氏はパワハラ被害の報告が増えている現状をこう分析する。
「そもそも、パワハラ関連の法律相談が増えてきたのは10年ほど前から。報道などでパワハラという言葉が定着し、社会的に問題視されたことが要因でしょう。自殺などの最悪のケースに至ることもあり、国も2020年にパワハラ防止法を施行するなどの対策に乗り出しています」