がん患者なら、だれもが最良の手術を受けたいと願うもの。しかし「切るか切らないか」など悩みは尽きません。そこで名医と称される専門医たちに尋ねてみました。
「自分が患者だとしたら、どんな治療を受けたいですか?」
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大腸がん(結腸がん、直腸がん)は、加工肉(ベーコン・ハム・ソーセージなど)や赤肉(牛・豚)を多く食べる人、アルコールの摂取量の多い人、肥満の人のリスクが高いことがわかっている。ビールを飲みながら、焼き肉を食べるのが大好きという太った人が、典型的な大腸がんリスクの高い人と言えるだろう。
野菜の摂取や定期的な運動がリスクを下げるので、肉食のときは野菜も一緒に食べ、運動して太らないように注意したほうがいい。また、家族が大腸がんになった人は、遺伝的になりやすい体質を持っている可能性があるので要注意だ。
大腸がんには、便の中に血が混じっていないかを調べる「便潜血検査」という簡便な検査法があり、大腸がんの死亡率を下げる効果が認められている。国は40歳以上の人に対し年に1回、この検査を受けるよう勧めている。ただし、便潜血検査で陽性反応が出ても、かならずしも大腸がんとは言えないので、陽性の場合は内視鏡(いわゆる大腸カメラ)による精密検査が不可欠だ。さらに、出血が多い場合には、がんが進行していることもある。早く見つけたいなら、確実なのは内視鏡検査だ。
「特に大腸がんになった家族がいる人は、少し早めに内視鏡検査を受けたほうがいいでしょう。内視鏡で見れば、ポリープ(突起性の病変)が多い人かどうかわかります。さらに、便潜血やバリウム造影検査では見つかりにくい悪性度の高い病変(平坦陥凹[かんおう]型腫瘍)も、内視鏡のほうが発見しやすいのです」(広島大学病院内視鏡診療科教授・田中信治医師)
田中医師自身、後輩に依頼して定期的に内視鏡検査を受け、2010年にはポリープを取ってもらったという。
「数年前に数ミリのポリープが見つかりましたが、数年後に内視鏡で再検査したら、見事に1センチに成長しており、びっくりしました。1センチを超えると一定の割合でがん細胞が混じってきますので、取ったほうがいいでしょう」
とはいえ、ポリープの診断の難しさは、良性のものから、がんリスクの高いものまで、様々なタイプがあることだ。取るべきものを取り、取る必要のないものは経過観察すべきだが、必要以上になんでも取ってしまう医師がいるそうだ。また、ポリープのタイプによっては、いたずらに内視鏡で取らないほうがいい場合もある。取れたと思っても、その場所にがんを残してしまう可能性があるからだ。
「私なら、その見きわめがきちんとできる内視鏡医に診てもらいたいです。たんに経験症例数が多ければいいとは言い切れません。大腸がんの診断と治療に定評があり、診療実績やその内容をきちんと公開している施設がいいでしょう」