そこで手を尽くして探してみたところ、関東地方のある大学でビラを貼った中国籍のA氏にオンラインで取材することができた。彼は中国北部の都市部出身、来日4年目の30代の男性だ。職業はIT業界で働く会社員だという。
ポスターは個人的に貼った
──〇〇大学でポスターを貼った理由は?
A氏(以下A):中国人留学生の多い大学だからです。それに、以前に別の人が貼った(習近平政権批判の)ポスターが(政府支持の)留学生に引っ剥がされたと聞いていたので、私がもう一度貼ってやろうと思いました。この大学のOBではありませんが、日本語を学んでいた時期に近くに日本語学校があって、よく学内で自習していたので愛着があるんです。
──中国政府に批判的な姿勢はいつから?
A:2008年の四川大地震のときに、腐敗のせいで子どもが被災して亡くなった話などを聞いてから、当局に反発を持っていました。ただ、それからは政治的な問題にたいした関心がなかったんです。明確に「反習近平」という意識になったのは、2022年3月の上海のロックダウンからですよ。あんなメチャクチャなことをやるのは許せないと。
──今回の党人事を通じて中央から排除された、習近平派以外の政治家たちをどう思いますか?
A:14億の人口がいる中国で、独裁的な体制がすぐに民主主義体制に変われるとは思いません。ただ、かつての江沢民や胡錦濤の時代の中国は、もちろん独裁政権だったことは変わらないものの、まだしも自由で今よりはずっとよかったと感じます。
── ポスターを貼った行為は、組織的なものですか? また、日本や世界で「橋の男」に呼応する動きが出ていますが、連携や情報交換はしていましたか?
A:完全に個人的な行動です。貼りに行く時、ネットで知り合った友達と一緒に行きましたが、 組織的にやったわけではないです。他にポスターを貼っている人たちとの連携や情報交換もないですね。私の場合、ポスターの内容はネットで流れているのを見つけた。それを自分でダウンロードして印刷しました。
中国人の全員が皇帝にぬかずいてはいない
──これから中国はどうなると思いますか?
A:今後も習近平体制が続くなら、中国は文化大革命があった1960年代に戻るでしょう。国民がひどく傷つけられた時代にです。