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広瀬すずが「私に気を使って…」と苦笑したことも…横浜流星、年上とぶつかっても「生意気だ!」と思われないワケ

広瀬すずが「私に気を使って…」と苦笑したことも…横浜流星、年上とぶつかっても「生意気だ!」と思われないワケ

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2022/10/30
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出演者の逮捕で、出演作がお蔵入りしかけた過去も

 2018年に公開された藤井道人監督映画『青の帰り道』は、本格ブレイクする前の横浜流星の演技力が光る作品だ。歌手をめざす少女を主演の真野恵里菜が演じた若者たちの群像劇で、その中でも不良少年のリョウを演じた横浜流星の演技、とりわけ高校時代の「クラスの友人たちから愛される悪ガキ」レベルの他愛のない不良少年から、後戻りのできない「半グレ」のアウトローに変貌していく演技の変化、その凄みはひときわ輝いていた。

『青の帰り道』の撮影は多くのトラブルに見舞われた作品だった。2016年の撮影中に俳優の1人が逮捕され、撮影したシーンのほとんどが使用できなくなるという事態に陥り一時は公開中止が決まりかけたが、出演者とスタッフの強い希望でほぼすべてのシーンを一から撮影しなおすという異例の判断でどうにか公開にこぎつけたのだ。

 出演者の逮捕という重い経緯がある上に、制作予算もスケジュールも事実上2回分の撮影を費やしているため、大規模な宣伝など望むべくもなかった。それでも映画が公開されたコロナ禍以前のミニシアターでは、横浜流星の演技を見るために足を運ぶ彼のファンが連日席を埋め、映画を支えていたことを筆者はよく覚えている。映画の中で彼が演じるリョウは決してカッコいい役回りではないのだが、その頃から横浜流星には彼の演技を愛してくれるファンが多くいたのだ。

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『青の帰り道』は、10代から芸能活動を続けてきた真野恵里菜が私生活をふくめた人生の岐路に立つタイミングで撮影された映画で、そうした若い俳優たちの人生への思いと、芸能界や社会に翻弄される物語の中の少年少女たちが重なる部分があったからこそ、スタッフもキャストも無理に無理を重ねてでも公開をめざしたのだろう。

 横浜流星はこの映画の主演ではなく、またほとんど宣伝されず小規模公開で終わったこの映画で映画賞を受賞することもなかったが、『青の帰り道』のミニシアター興行を支えたのが彼の演技力とスター性であったことは疑いがない。

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