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親友の父にナイフを突きつけ、遺骨を奪う…「私にはできません」から一転、永野芽郁がハードな役を引き受けた“意外な動機”

CDB

2022/10/09

「第一に原作が大好きだったので、わたしが演じることでぶち壊しにしてしまったらどうしようという怖さもありました。『やってみよう』ぐらいの気持ちではできない。覚悟を決めていいものをつくらないと女優人生が終わるぐらいの気持ちで挑まないとダメだと思いました」

 9月30日公開の映画『マイ・ブロークン・マリコ』について、主演の永野芽郁がそう語り始めたのは、試写を重ねるごとに観客からの賞賛、好反応が寄せられるようになってからのことだ。

クランクイン前に抱いていた不安

「これだけ漫画で成立しているものを映画でやって、しかも私がシイノをやって、原作をすごく好きな方たちはきっと『なんで』って思うだろうし、期待に応えられる自信がなくて。シイノをやるには表現力も技術力も足りてないんじゃないかって思った」

©AFLO

 主演俳優が公開前のインタビューでそう不安を語れるようになったのは、逆説的だが「そうはならなかった」という確信を持てる作品になったことの裏返しでもある。それは単に役者として演じ切ったという自信だけではなく、試写による観客の反応を確かめることで初めて重い荷物を肩から下ろすように吐露することができた感情だったのだろう。

 筆者自身も7月11日の最速試写で映画を見るまで、永野芽郁がクランクイン前に抱いていたような不安に似た危惧を持っていたのも事実だ。そもそも平庫ワカによる原作コミックは、第1話からWEBで爆発的な反応を呼んだにもかかわらずたった数話で完結した伝説的作品である。あまりにも短いので、単行本としてリリースされる際には初期の短編作品を最後に収録してボリュームを調整してあるほどだ。その駆け抜けるような内容と描写が、実写俳優による商業劇場映画になりうるかという懸念もあった。

 7月11日、167席の試写会場には映画関係者も、一般公募の観客たちも混在して満席となっていた。その観客に向けた上映前のアナウンスの最後に「上映時間は85分となります」と女性の声が告げた時、満場の観客がいっせいにざわめいたのをよく覚えている。

 永野芽郁の過去4本の主演映画の中で、90分を切った映画は一本もない。大手商業エンタメ映画というよりは、かなり先鋭的な内容になっているのではないか。まだ誰も見たことがない映画の85分という上映時間のアナウンスに対するあの日の観客たちのざわめき、動揺には、そうした不安も含まれていたように感じる。