これを受けて沿線地域の住民らが立ち上がり、約11万人分の署名を集めて存続を求めた。その後、県と津市が工事費用のうち約12億円を負担するなどし、6年半ほどが経った2016年、全面復旧した。
しかし、それもつかの間…。
2022年7月、ローカル鉄道の在り方を議論する国交省の有識者会議が、赤字路線の存続と廃止についての提言を示した。
鉄道の輸送効率を表す「輸送密度」=「1キロメートル当たりの1日の平均利用者数」が1000人未満の線区について、存続か廃線か協議の対象とするというものだった。
名松線の2021年度の輸送密度は、195人。JR東海の中で、唯一1000人未満の路線だった。
JR東海・金子慎 社長(8月4日の会見):
廃線であるとか、バス転換ということを予定している線区はございません。
名松線については、台風18号の影響で被災しまして、その時どうしようということで地元と協議をして、復旧して、そういう経緯があるので当面は運行をしていこうと考えております
「名松線は地域の宝」 観光資源としての利用で解決策を探る
「名松線を守る会」の会長、岸野隆夫(きしの・たかお 69)さんは、これまでの歴史が存続につながったことに、胸をなでおろした。
名松線を守る会・岸野隆夫 会長:
いいなと思いますよ。まずその話を聞いたときに、名松線は大丈夫かなという思いはありました。ひとまずは安心しています
現在、守る会の会員は美杉地域を中心に3300人あまりいて、沿線の景観整備やイベントによる利用促進に取り組んでいる。
2022年7月のアマゴのつかみ取りには、家族連れなど約100人が、2時間に1本の名松線に乗って参加した。
名松線を守る会・岸野隆夫 会長:
不便を前提に考えていかないと…。公共福祉という面からずっと存続もさせて欲しいと思っていますし、地域の活性化も踏まえながら、歓待の精神で少しでも乗車者数が増えていくような取り組みをしていきたいなと思っています