1ページ目から読む
2/5ページ目

「免許を取っても車に乗らないで」

 高圧的な態度によって教習生を萎縮させる教官に次いで、忌避されるのが「嫌みったらしい教官」である。「なんでこんなこともできないの?」といった言い回しにより、たびたび無力さを自覚させようとする教官など、「ネチネチ系」の攻撃に精神を削られる教習生も多いだろう。

 合宿で群馬県の教習所に通っていた大学生のBさん(20代男性)は、教官の「人格否定」とも取れる言動に日々悩まされていたと話す。

「最初の教習で当たった50代くらいの男性教官が、やたらと出身地や大学など関係のないことを聞いてきて、不思議に思っていました。『コミュニケーションを図ろうとしているのかな』とも思いましたが、フレンドリーな感じでもなく、少し不気味だったんです。

ADVERTISEMENT

 次の日またその人と当たって、態度がまるっきり違うことに驚きました。走り出してすぐに『まだこのレベル? 学習能力ねぇなぁ』と言われたり、ミスして長いお説教が始まり、返事をせずにいると『話聞いてる? 君、ほんとに大学生?』と詰め寄られたり、『だから東京のお坊ちゃんは……』と呆れられたり。ほんとに、当たるたびに憂鬱でした。

 それでも毎回、修了の判は押すのですが、最後の方になると『君は免許取っても車に乗らない方がいいよ!』と言われ、それじゃ何のための教習なんだと……」

 教習は「命に関わる乗り物」の扱い方を教える場であるから、ときに厳しい指導が必要になることもあるだろう。とはいえ当然、そこで教習生の「人となり」や「尊厳」を踏みにじる言動は指導上必要なものとは言えず、教官の個人的な「憂さ晴らし」以外の何物でもない。