助手席で居眠り、指摘されるも悪びれず……
さらに、教習生にとって悩みの種となりうるのが「無気力な教官」である。わからないことばかりの段階で指導を放棄されては、必要な技術も身につかない。
地元の教習所を最近卒業したCさん(20代女性)は、教官の「居眠り」に驚かされた。
「高齢の男性教官で、ほとんど同乗しているだけで何も教えてくれない人がいました。道順だけ指示して、あとは幽霊みたいにそこにいるだけ。一応、こちらから質問をすると答えてくれて、話も割とわかりやすいのですが、なぜかいちいちマスクを下にズラして話すので、あまり頻繁に質問したくはなくて……。
一番驚いたのは、教習中に隣で居眠りしていたことです。普通に腕組みしながら寝息を立てて、マスクもズレて鼻を出していました。『すみません、次はどっちですか』と大きめの声で起こすと、ハッと目を覚まして、何事もなかったように『9番を右だね』と。
何人か同じ教習所に通っていた友達に聞くと、『路上教習中に寝られた』という人もいたので、たぶんもう常習犯なんだと思います」
教官が何も口を挟まなければ互いのストレスは少なく済むだろうが、教習は「教官と教習生」の間で完結するものではない。教官はまったくの運転初心者を「公道を安全に走れる状態」にまで引き上げる責任があるはずだが、そうした意識が共有されていないケースもあるようだ。
待合スペースにまで響く「内輪もめ」
話を聞くなかで、教官に対する不満以上に、教習所の環境面や対応面に対する憤りの声も多かった。予約や送迎システムの不備や、教官ごとの指導内容のブレといった問題である。その他、失効した免許を再取得すべく非公認の教習所に通っていたDさん(30代男性)からは、「待合スペースの異様な雰囲気」について以下のような話があった。
「通っていたのは家族経営の小規模な教習所でした。代表やその息子さんに指導を担当してもらいましたが、二人ともあまり覇気のない感じで、試験のために必要最低限を教えるようなスタンスでしたね。
最悪だったのが、待合スペースの雰囲気です。小さい建物なので、受付の奥にある事務スペースの様子がまるわかりで、つねに50代くらいの女性が事務員に当たり散らしていて……代表の奥さんだと思いますが、大声で『なんでこれを先にやらないの!』とか、『コーヒー切れてるじゃない!』とか、終始誰かに何かを指摘していて、事務員の人たちはずっと切羽詰まった顔で仕事をしていました。
裏口に近いトイレでは、壁の向こうから教習生の悪口が聞こえてくることもあって、とにかく居心地の悪い空間でしたね」
教習所に限らず、家族経営の会社にまつわるトラブルは随所で聞かれ、「理不尽な身内のルール」「独裁的・閉鎖的」「コンプライアンス意識の欠如」といったネガティブな側面が指摘されることもある。上の話は、身内以外への当たりが激しい独裁型のケースだろうか。