事故前のテレビ報道でも、危険性は指摘されていた
今年は特にコロナ禍が始まってから3年ぶりの屋外で初めてのノーマスクのハロウィンイベントで、およそ13万人もの人が梨泰院を往来したと伝えられた。29日の夕方、テレビではすでに人々で埋まった歩道が映され、その中には幼い子どもを連れた家族の姿もあった。
現場からレポートする記者たちは皆、事故の危険性について触れており、現場にいた韓国紙の記者は、「3年ぶりのイベントだけに解放感で溢れていました。例年以上の人が集まることは予想できたはずで、警察は200人近い体制で臨んだと説明していますが、違法駐車や性関連事件、麻薬の取り締まりに集中していたといいます。事故が収拾された後、人波を誘導する警備員の不在が問題になると思います」と話す。
韓国政府はすぐに事故を検証する対策本部を立ち上げ、尹錫悦大統領も犠牲者を悼む談話をだした。しかし、行政安全省大臣が「例年並みの人波だった。警察を配置したとしても解決できる問題ではなかった」と発言し、非難が飛んでいる。
野党「共に民主党」は現政権への非難を強めたいところだろうが、「共に民主党」のシンクタンク「民主研究院」のナム・ヨンヒ副院長が、「こんな大惨事が起きたのは、大統領室が青瓦台から(梨泰院のある竜山区に)移転し、警備がそちらに移ったからだ」という内容を自身のFacebookに書き込み、物議を醸して削除するハプニングもあり、政治利用と逆非難されることを怖れて、まずは事故が収拾してからという姿勢を保っている。
米バイデン大統領など各国トップから哀悼の辞が続々届いている。米ワシントンポストは「2014年に起きた観光船セウォル号の沈没事故に次ぐ悲劇」と書き、その後の韓国の危機管理について疑問を呈した。観光船の沈没では済州島に修学旅行に行く予定だった高校生248人を含め304人が命を落とし、当時の韓国は沈痛な雰囲気に包まれた。今回の惨事を受け、韓国メディアは東京・渋谷でのハロウィンイベントの警備を引き合いに出し、韓国の危機管理の不在について警鐘を鳴らしている。
ツイッターなどのSNSには事故当時の生々しい映像が次々と上がっていたが、削除が呼びかけられている。現場にいた人やたまたま通りかかった人、たまたま映像を見た人などの事故後のPTSDを憂慮するためだ。また、心肺停止の際に行う救助活動のCPRに注目が集まっており、SNSやテレビなどでもその方法について詳しく取り上げられている。