より辛いメニューを求めて東に西に奔走し、待ち構えるお店で最強のメニューに挑んでいく「激辛マニア」たち。そんな中でも“最強”と名高い人物の一人に、山田順一さん(54歳)という男性がいる。
タバスコの数百倍の辛さの、ギネス級と呼ばれる唐辛子入り料理を、顔色ひとつ変えずに平らげるのは当たり前。どんな店でも、一度たりとも敗北したことがない。さながら激辛界のヒクソン・グレイシーである。
しかし激辛チャレンジは、一歩間違えば死に至ることすらある行為だ。それにもかかわらず、なぜ山田さんは激辛料理を食べ続けるのか。
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激辛料理によって身体に起こる信じられない症状
「内臓をぞうきんのように絞られて、犬に嚙まれているかのような激痛です。もう殺してくれ! と叫びそうになりながら、地べたを転げまわるほどですね。3時間くらい起き上がれないこともあります」
激辛料理を食べた後の状態を、山田さんはそう説明する。
一般的に辛いものを食べると、胃が痛くなる、おなかを下すなどの症状がよく起こる。ただしそれは、常識の範囲内での辛さの場合。山田さんら激辛マニアが挑んでいるのは、人間の限界ともいえる辛さへのチャレンジだ。
辛さを表す数値に、スコヴィル値というものがあり、タバスコが約5000スコヴィルのところ、ギネスで一位に認定されている唐辛子・キャロライナリーパーは約164万スコヴィル。また、近年は300万スコヴィル越えの品種も誕生しており、それらの刺激は催涙ガスに匹敵するほどだそう。言わば、劇物を体内に入れているわけだ。当然ダメージや症状も半端ではない。
「あまりに辛いものを食べると、体が毒物だと判断して、体内から出そうとするんです。食べ終えた直後におなかが下って、汚い話ですが、水道の蛇口を思いきりひねったような状態になる。口からも戻そうとするので、上から下から大変です(苦笑)。
食前に乳製品を、食後に胃薬を飲むなどの対策をしても、このレベルだとほぼ効果がないですしね」