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島根県の山深くにポツンと佇む“激渋レストラン”…猟師が振る舞うイノシシ料理が絶品すぎた

島根県の山深くにポツンと佇む“激渋レストラン”…猟師が振る舞うイノシシ料理が絶品すぎた

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イノシシを美味しくいただくための“数々のこだわり”

「あとね、イノシシの肉は特殊な機械で水を電気分解して、酸性とアルカリ性に分けてから丁寧に殺菌・消毒をしとる。弥栄町は水がきれいでお米が美味しい地域なんよ。イノシシを処理する工程で川を汚してしまったらいけんよね。だから、ケミカルな洗剤は使わない。自然のものをいただくわけだから、自然に悪いことをしたくないでしょう。うちのこだわりだね」(同前)

水へのこだわりを語る今田さん

 イノシシを美味しくいただくため、そして豊かな自然環境を守るためのこだわりを次々に語ってくれながら、すでに加工処理が終わった枝肉を見せてもらう。生の状態でパウチされたものに加え、炭で焼いてタレで煮た、チャーシュー状態の肉も。

調理中のイノシシ肉を見せてもらう

 イノシシ肉のチャーシュー……。一体どんな味がするのか。なんとも期待が高まる。

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いざ実食

 口の中にヨダレが溜まり始めた頃、スタッフの稲沢さんから「そろそろ、何か食べましょうか。お腹も空いとるでしょう」と声がかかる。この瞬間を待っていた。

 はじめに提供されたのは、「猪肉さっと炒め(900円)」。

肉はもちろん野菜の甘さに驚かされる「猪肉さっと炒め」

 締まったイノシシ肉は噛めば噛むほど脳が喜ぶような美味しさ。何か別の肉の味に例えようと記憶を振り返るも、これは他の何物でもないイノシシ肉ならではの味わいだ……。ジビエに抱いていた苦手意識が一気に吹き飛ぶ。

 さらに驚かされたのは、イノシシ肉とともに炒められたキャベツの旨味。料理を見るに、調理行程としては、肉と野菜を炒める以外の大きな工夫はとっていないだろうにもかかわらず、野菜から、これまで味わったことのないような甘みが感じられるのだ。今田さんに尋ねてみると、「サラダ油だったら美味しさ半減だろうなあ」と語りながら、イノシシから取ったラードのみを料理に使っていることを教えてくれた。

 続けてテーブルに並んだのが「猪肉炭火焼ロースト(900円)」。先に紹介したイノシシのチャーシューがこれだ。箸で簡単に裂けるほど柔らかく煮込まれたチャーシューを慎重に口へと運ぶ。

冷やした状態の「猪肉炭火焼ロースト」。加熱すると肉質はより柔らかくなる

 まったく臭みがない……。咀嚼していくと、他の動物肉では例えようのない独特の旨味が口いっぱいに広がる……。取材ということで断腸の思いで飲酒を諦めたが、この一切れでビール1Lは飲めると確信した。なんとも悪魔的な美味しさだ。