展示されている車両が美しいワケ
圧倒的な車両数、希少な車の数々はもちろん、それ以外にも日本自動車博物館を見学して驚かされるのが、展示されている車の美しさだ。
「サビが出ていたり、バンパーが歪んでいたりした場合、最低限のメンテナンスは行っていますが、基本的には譲り受けた時のままの状態で展示しているんですよ。
それでも状態のいい車が多いというのは、オーナーさんがとても大事に乗り続けていたからということでしょうね。
『ボロボロになってもう乗れないしお金にもならないから引き取ってよ』というよりは、『大事に大事に乗り続けてきたけど、どうしても手放さなくてはいけなくなって……』という方からの寄贈が多いんです。
オプションのシートカバーがついたままとか、当時流行っていたホイールを履いたままとか、そうした部分もそのままに展示しています。純正で揃えたほうが良いという考え方もあるとは思うのですが、実際にその車がどのように使われていたのかということも、当時の車文化を伝えるうえで重要なポイントだと考えています」
大事に使われ続けてきた車両だからこそ、譲り受けた時のままでも美しい状態で展示できる。博物館を取り巻く人々の車愛が、日本自動車博物館の運営を下支えしているというわけだ。
「定期的なメンテナンスも周りの人たちの協力あってこそできていることです。自動車屋さんや元ディーラー、元自動車会社勤務のメカニックの方がボランティアでお手伝いしてくださっているんですが、当館から依頼しているというよりは『日本自動車博物館のためなら』という思いで手伝ってくれる人が本当に多いんです。
学生の方もボランティアに協力してくれていて。一番ありがたいのは展示替えのタイミングで、館内の車の移動を手伝ってもらうときですね。移動にあたってエンジンをかけることはできませんが、憧れの名車に触れてみたい、博物館に関わりたいと思ってくれている方が、どんどん集まってきてくれています。
SNSやブログにそのときの様子をアップして喜んでくださっている姿を見ると、こちらとしても本当に頭が上がらないような思いですね」