結果、いまや日本で発売されたCDシングルの売上の3分の1ほどをジャニーズが占める異常事態を生じさせている。音楽のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の遅延は、間違いなくジャニーズ事務所によるものだ。
配信で明らかになってしまう「不都合な真実」
ストリーミングは、音楽の人気がシビアに試される空間だ。多くのひとが何度も聴きたいと思う曲でなければ、決して再生回数が増えることはない。そして再生回数が増えなければ、売上も期待できない。つまり、音楽の“広がり”が大きな価値を持つメディアだ。
ジャニーズ事務所にとって、そんなストリーミングは非常にリスキーな場だ。その人気は、音楽だけにあるわけではないからだ。各グループのメンバーたちは、タレントとして地上波テレビの番組にレギュラー出演したり、俳優としてドラマや映画などで活躍したりするのが一般的だ。King & Princeで言えば、岸は『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)で農作業をし、平野は『クロサギ』(TBS)などで主演を務める。
音楽だけに集中しないその活動は、“アイドル的”と言えるものなのだろう。ファンも、音楽だけでなくそうしたメンバー個々のさまざまな活動を求める。そこにあるのは音楽の“広がり”ではなく、一部の熱狂的なファンによる強い愛情=“深さ”だ。
CDはそうしたファンの熱意=“深さ”を、高単価で売上に結びつけられる商品だ。この状況こそが、ジャニーズがストリーミングに積極的になれない最大の理由だ。そこには、長い時間をかけて培った強固なアイドル文脈(ビジネスモデル)が成立している。
だが、こうしたジャニーズの方法論は徐々に機能しなくなりつつある。
たとえば日本のメイン音楽チャートとなったBillboardでは、年々CD売上のポイントが下げられ、ストリーミングとYouTubeに人気の指標が集約されつつある。こうしたなかで、CD依存を続けるジャニーズは当然上位に来にくくなる。
実際、11月2日にリリースされたSixTONESのニューシングル「Good Luck!/ふたり」は、初週にCDを40万枚弱も売り上げたにもかかわらず、Billboardでは3位止まりだった。一方、その上に位置するOfficial髭男dismと米津玄師の曲はCD発売されていない。ストリーミングやYouTubeの再生回数の多さが、上位にランクインさせている。