こうしたメディアの変化によって、違法ダウンロードなどで長らく低迷を続けてきた世界の音楽産業も劇的な回復を遂げた。とくにそれは、Spotifyなどストリーミングサービスの浸透によるところが大きい。
だが、世界第2位のマーケットである日本の音楽産業は出遅れた。単価の高いCDに固執し続けたからだ。音楽業界の売上の割合は他国では7~8割ほどを配信が占めるのに対し、日本は現在も4割程度でしかない。そして産業全体が右肩上がりの他国に対し、日本はいまも復調の兆しが見られない。
アメリカではCDがアナログレコードよりも売れておらず、日本でも各家庭からプレイヤーが消えゆく状況にある。それでもここまで日本でCDが売れるのは、特有のアイドル文化によるものだ。
とくにその状況を保持したのは、いまも配信には積極的でないジャニーズと、握手券などの封入によって複数枚購入を促進し続けたAKB48や坂道グループだ。
“CD依存”をやめられないジャニーズ
ジャニーズにとって、CD売上は重要な収入源のひとつだ。しかもここ数年は、新型コロナによってコンサートや公演もままならなかったため、その重要性はより高まったと推察される。
実際、ジャニーズのCDはいまも驚くほど売れる。とくに2年前にデビューしたSixTONESとSnow ManのCD売上は群を抜いており、なかでもSnow Manは2年連続してミリオンヒットを飛ばした。また、昨年デビューしたなにわ男子もデビューシングルが80万枚を超える大ヒットとなった。
King & PrinceもCDが十分に売れるグループだ。4年前のデビューからシングル11枚とアルバム4枚は、すべて40~80万枚の売上を記録している。メンバーの脱退発表後に発売された「ツキヨミ/彩り」も、初週に79.2万枚と過去最高のヒットとなった。CD売上だけを見れば、ジャニーズにとってSnow Manに次ぐ稼ぎ頭だ。
こうした若手グループの人気もあって、ジャニーズのCD総売上枚数は昨年過去最高を記録した。アルバムは約382万枚、シングルは約1045万枚とはじめて大台に乗った。
だが、日本の音楽産業全体ではCD売上が年々減り続けている。特にコロナ禍以降の2年間は、AKB48や坂道グループなどが“接触ビジネス”(握手会等)ができなくなり急減した。そんななかでもSnow Manなどのデビューもあって、ジャニーズのCDはさらに売れた。