ネックは日本芸能界との関係か
問題があるとすれば、やはりSMエンタなら遠慮しかねない日本芸能界との政治的な関係だろう。だがHYBEは、グループの移籍やヘッドハンティングなど前例のない展開を続けてきた会社でもある。
その代表的な例が、LE SSERAFIMのメンバーとなったサクラ(宮脇咲良)とキム・チェウォンだ。ふたりはともに期間限定のグループ・IZ*ONEのメンバーとして2021年4月まで活動をしていた。その後、所属プロダクションにそれぞれ戻ったふたりは、ほどなく退所してHYBEに移っている。
HKT48メンバーだったサクラの場合は、もともとの48グループの性質上、移籍のハードルは極めて低かった。だが、キム・チェウォンの場合はそのタイミングや本人の発言を踏まえると、契約期間内でのヘッドハンティングの可能性が高い(『weverse magazine』2022年5月9日https://magazine.weverse.io/article/view?lang=ja&num=395)。詳細は不明だが、HYBEは移籍金を払った可能性がある。まるでプロスポーツ選手のように。
そんなHYBEが、日本芸能界にまったく忖度せず平野などを獲得しても不思議ではない。たとえそれによって日本の地上波テレビなどから締め出されたとしても、もはやそこは活動するメインの場でもない。圧力などで業務の進展が妨げられるようなことがあれば、公正取引委員会に申し出ればいい。
両者にとってWin-Winであり、かつリスクは3つの選択肢のなかでもっとも低い──3人のHYBE移籍の噂が続くことには、十分に状況的な根拠があるのだった。
滝沢氏の離脱によって起こる変化
King & Princeを脱退する3人は、言うなれば海外を目指して「FA宣言」をした。そしてジャニー氏の後継者だった滝沢氏も去った。
つまり、有力な人材がジャニーズからどんどん流出している状況だ。とくに退所の防波堤として機能していた滝沢氏の離脱は、今後さらなる変化をもたらす可能性がある。前述したように新たに事業を興す可能性は高く、今後そこに現役のジャニーズグループのメンバーが移籍することも十分に考えられる。
今年の『紅白歌合戦』には、男性グループのBE:FIRSTとJO1も出演する。ジャニーズの競合となるこの両グループは、ときに協力しながらシーンを変革しつつある。しかもBE:FIRSTを手掛けたSKY-HI(日高光啓)と、JO1のメンバー・白岩瑠姫は過去にジャニーズJr.だった。
ジャニーズ一強の崩壊は、さらに進みつつある──。