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「やるべき仕事はこれだと覚悟を持てるようになった」

 その後、ドラマや映画への出演も増え、名バイプレイヤーなどと目されるようになる。俳優として転機となったのは、2008年に公開された映画『接吻』で、豊川悦司演じる死刑囚に愛情を注ぐヒロインを演じたことだ。

 小池はオファーを受けた当初、どうしてもこの役のような女性を理解できず、一旦は断っていた。それでもプロデューサーや監督から何度も誘いを受け、改めて脚本を読み返してみると、人が人を好きになるのは理屈ではないし、死刑囚を愛してしまう女性と自分のなかにも接点があるのかもしれないと考え直した。すると興味が湧いてきて、「演じてみたい」と思うようになっていた。結果、同作での彼女の演技は高く評価され、彼女としても、この作品があったから《私がやるべき仕事はこれだと覚悟を持てるようになりました》という(『日経ビジネスアソシエ』2016年11月号)。

映画『接吻』(2008年)

 一方で舞台にもコンスタントに出演を続ける。かつてテレビの仕事ばかりになってファンと接する機会が減ってしまい、どんな人が自分を支持してくれているのかわからなくなったことがあったが、そんなとき、観客のダイレクトな反応を確かめられる舞台が仕事のモチベーションとなり、救いにもなったという。いまから4年前、2018年のインタビューでは、長期的な目標を訊ねられ、《大好きな舞台を、座長という立場で満員御礼にすることです》と答えていた(『THE21』2018年5月号)。

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グラビア時代は「自称・威圧系」だったが…

 グラビアをやっていたころは、いつも睨んでいたり、あまり笑顔を見せない表情の写真ばかりだったため、当時流行っていた癒し系に対し「威圧系」と自称したこともある。しかし、いまでは柔和な表情も似合うようになった。さまざまな経験を重ねて、余裕が生まれたからなのかもしれない。それだけに、舞台で初主演したころよりも座長がぴったりとハマる。『鎌倉殿~』の政子にしても、誰にも分け隔てなく接するところなど、座長的な雰囲気がある。

『PARA'ISO:Guadalajara,Tequila y Costa Alegre』(2003年)

 北条政子は従来、悪女のように語られがちだったが、『鎌倉殿~』の脚本家の三谷幸喜はそのイメージを覆したいと公言してきた。実際、劇中では政子の魅力に周囲の男性たちが次々と惹かれていく。承久の乱で彼女の呼びかけに応じて御家人たちが決起するシーンは、おそらくその集大成となることだろう。そのときの小池栄子の演技がいまから楽しみだ。

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