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「めちゃめちゃ怖かったです。あっ、お客さんがついてきてない、って。全員、今すぐテレビを消してくれ! って思いましたもん。コントならウケなくてもそんなに焦らないんです。役に入ってるし、お客さんの方もあんま見ないので。

 ただ、漫才はどうしてもお客さんの顔が視界に入るので、笑ってないと早く終わらしたいっていう気持ちになる。なので、やばい、やばい、でも、逃げたらあかん、って。最後までしっかりやらなと言い聞かせながらやってましたね。あんなに恥ずかしい思いをしたの、初めてでしたね」

アキナの山名文和(左)とツッコミの秋山賢太(吉本興業ホームページより)

「M-1は日本全国の前でスベってるのと同じ」

 一方、山名は「真っ白な中でやっているような感覚だった」と回想する。

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「一生懸命、笑いをすくおうとしてるんですよ。でも、すくっても、すくっても、指の間からこぼれ落ちていくみたいな感じでした。M-1は日本全国の前でスベってるのと同じですもんね。地獄です。まさか、あんなことが自分の人生で起こるとは思っていませんでした」

 そんなデリケートな芸だけに客の心をがっちりつかんだネタには、必ずと言っていいほど「奇跡の物語」が潜んでいた。プラス・マイナスの場合もそうだった。のちに岩橋は、あのときの心境をこう振り返っている。

「僕、すごく細かい性格なんで、普段は、出る直前まで相方に『あそこゆっくりな』とか『あそこはテンション高く』とかグダグダ、グダグダ言ってるんです。でも、あの日だけは、なんか知らんけど『もう最後やし、楽しむだけやな』って言うただけで、すっと出ていけた。あんな感覚になれたんは初めてでしたね」

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