統一感のないカオスな雰囲気が次第に人気を呼び……
仏頭の下は水子供養のお堂になっており、小さなお地蔵様が無数に祀られている。ふざけてはいけない雰囲気に気を引き締めながら順路に沿って奥へと進むと、今度は仏像とは別に芸術的な人の彫刻や動物の像、また作風が全く違うゆるい表情の仏像が並んでいる。
ここには彫塑家であった初代院主都賀田勇馬氏と2代目である息子の伯馬氏が作った芸術作品がいたる所に置かれているのだが、それは仏像だけにとどまらずありとあらゆるものが並んでいる。釈迦像や観音像の横にはライオンや馬など動物の像が置かれ、今にも動きそうなリアルな人物像がある一方で、キュービズムのような抽象的なものまである。
とにかく2人が作りたいと思ったものが作られ、年代によってもまた作風が変化したようだ。そのため統一感のないカオスな雰囲気となり、結果的に「変わった観光スポット」として人気の理由なのである。
とはいえ初代院主である都賀田勇馬氏は、現在の東京芸術大学で学び、上野公園の天神牛や、安宅の関所跡にある弁慶と富樫の像など多くの作品を残した功績のある人物。作品はどれも見応えのあるものばかりだ。
しばらく歩くといよいよ、ハニベ巌窟院のメインであり最大の見どころである洞窟にたどり着く。入り口では2代目院主伯馬氏の名が刻まれた力強い仁王像が待ち構えていた。
初代院主は戦後まもなく乱世を憂え、世界平和と人類繁栄を願いながら仏像を作り続けていた。そして昭和26年、もともと石切場であったこの洞窟を利用し、作品を安置したのがハニベ巌窟院のはじまりだ。作品は昭和30~40年代に作られたものが多く、徐々に増え続け昭和50年代にはほぼ現在の状態になったそうだ。