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 地獄の楽しみ方はまだある。地獄のおもしろさは、鬼の表情にあるのだ。全国各地でも地獄を表現した絵や人形を見るが、どれも共通しているのが「人間より鬼のほうが精巧に作られている」という点だ。

一生懸命働く鬼

 鬼はとにかく人間を痛めつけることに一生懸命であり、どの場面でもまじめで働き者だ。ここの鬼たちも表情はいつも真剣で、ときに楽しそうでもある。鬼ひとりひとりをよく見ていくと、働きぶりが繊細だったり大胆だったりと、それぞれの性格までもが見えてくるようだ。一方で苦しんでいる人間は裸で単一色な上、動きや表情ももだえ苦しむ一択でバリエーションがないように見える。

ここだけ賽銭が投げられている「乱用の罪」

 創作する側からすれば、鬼のほうが作っていて楽しいのだろう。そんな、作者の心情までもが透けて見えてくるのも地獄のおもしろさだ。

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釈迦像が並ぶ極楽ゾーン
洞窟の先には公園へと道が続いているが、雪の降る季節は閉鎖されるので注意

 地獄エリアが終わると最後は極楽浄土を表しているかのような釈迦像が並ぶ。ここで終わりかと思いきや、洞窟を抜けた奥にはさらに公園へと道が続いていた。公園には「日本一大涅槃像」があると書かれている。これはなんとしても行かねばならない。

動物にでも遭遇しそうな森の中をしばらく歩くと……

 洞窟を抜けると鬱蒼とした森へと続く険しい道に繋がっていた。雪の季節は封鎖されるというこの道は、雨が降っただけでも危険であり、晴れていたこの日でも落ち葉に足を取られそうでヒヤヒヤした。気づけば入り口周辺であれだけ見かけた観光客がひとりもいない。ここまで足を伸ばす人はなかなかいないのだろうか。いよいよ動物にでも遭遇しそうな森の中をしばらく歩くと、ようやく開けた場所に出た。

公園へと続く険しい道

 あたりにはさっきまで見てきたような芸術的な像が散見され、来た道は間違っていなかったんだと確信する。そして公園の奥には、目当ての日本一涅槃像も目に入った。近づいてみると、日本一と言う割には意外と小さいように見える。これはどうやら、完成した当初は日本一だったということのようだ。未だに日本一という言葉を消さないところがおもしろいじゃないか。

全長6mの釈迦涅槃像。作られた当時は日本一の大きさを誇っていた

 見学ルートをすべてまわり、入り口の方へと帰ってきた。最後にはおみやげコーナーまで充実しており、仏頭の写真を印刷したTシャツやマグカップ、ステッカーなど多種多様にオリジナルグッズが揃っているのが嬉しい。

 現在の院主である方に聞くと、初代院主はすでに亡くなられており、2代目の伯馬氏も高齢であるため、新たに作品が今後増えることはないという。そうであるからといっても、非日常を存分に楽しめるハニベ巌窟院がすばらしいスポットであることに変わりはない。ぜひ理解のありそうな友人を誘って訪れてみてほしい。

 ハニベ巌窟院が多くの人で賑わい、いつか、高さ33mの大仏が山の頂上に建立されることを願わずにはいられない。