洞窟の中を進んでいくと……
洞窟内は石切場であった名残を多く留め、壁や天井から石を切り出した形がそのまま残されている。よく見ると天井や壁には石工たちの手で刻まれた無数のノミの跡も見られ、当時の職人たちの姿が見えてくるようだ。
洞窟の序盤はお釈迦さまの生涯を描いたものや、阿修羅像、鬼子母神像など。続いてインドの宗教彫刻が並んでいるのだが、これらは実際にインドへ行き、目にしたことで「これも作りたい」と再現して作られたものだそう。
絶妙に不気味な「地獄エリア」
そして後半は「仏の世界があるのなら、裏側である地獄の世界も作るべきだ」と、地獄エリアが展開されている。さまざまな罪を犯した人間たちが鬼に苦しめられているのだが、その世界観が絶妙に不気味で脳裏にこびりつく。
人間たちの悲惨な表情と鬼たちのおぞましい姿が、薄暗い洞窟という空間と、周りに誰もいないことが手伝い、より一層恐怖に拍車をかけている。我が子を殺した者は子供を生んでは食べ、食べてはまた生むというお産のデススパイラルに陥り、人をたぶらかした者は舌が引き抜かれ、または目玉がくり抜かれている。
しかし一方で、人間の体を調理して酒盛りをしている鬼たちは実に楽しそうであったり、女遊びに明け暮れた罪に苦しむ人間には賽銭が投げられていたり、さらし首が並ぶ間に自身の顔を並べて撮影スポットにしたりなど、エンタメ要素もあるのが楽しい。地獄といえば3mにもおよぶ閻魔大王もいる。
その手前には、生前の行動をそのまま映し出すといわれる鏡も置かれているのだが、ガサガサでなにも映らない状態。
大人は地獄の出来映えに終始感心するが、たまたま居合わせた子供は閻魔大王の前で立ちすくんでおり、ここに来たことで良い子になるかトラウマになるかは紙一重のようだ。